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シグナル
【青春 恋愛小説】

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シグナル¨2¨-1

「ご飯行こうよ、ねえ。起きろってば」

机に突っ伏している速人を揺さ振るけど、全く起きる気配が無かった。
ゼミが始まったのとほぼ同時に眠り始め、終わって10分過ぎた今もぐうぐう鼾をかいている。

「ほっとけ成敏。不真面目なやつは寝かせときゃあいいから」
「後でうるさいでしょ、置いてっただの何だのって」
「置いてけぼりが嫌なら寝なければいいんだ。勝手すぎるぜ」

僕も賢司も大学生活には慣れてきたけれど、速人は慣れすぎてると思う。

「先に飯行こうぜ。んなもん放置しときゃいいよ」
「でも・・・」
「もうあいつらも待ってるだろうし、早くしないと席無くなるぞ」

昼の混み様は通学電車に近い。
もう賢司の言う通り席は無いかもしれないな。
僕は速人が気になったけれど、賢司の後をついていった。

地下の食堂は生徒でごった返しており、人の波に酔ってしまいそうだった。
だけど毎朝の電車で鍛えられてるから簡単には参らない。慣れ、とは良くも悪くもあるものだ。


「よっ。あれ、今日は2人?」


3人は入り口近くに座っていて、僕達に声をかけてきたのは織田さんだった。
大体はそうだな、会って最初に喋るのは織田さんだ。
続いて葉川さんの間延びした挨拶があり、最後に控え目な妹尾さんがぼそりと言う。

「あのバカは講堂に置いてきた。寝かせときゃあいいんだ」
「そういえば今週はまだ揃ってないね〜、信号機」

葉川さんに言われて、改めて速人は月曜から連日昼休みに遅刻してると気付く。

信号機、というのは僕達3人組の服の色合いだ。
賢司は赤、速人は青、そして僕は黄色が好きだった。
着ている服から身の回りの物は大体それぞれ好きな色ばかりなので、言われた時は思わず頷いた。

葉川さんは緑が好きらしく、織田さんはピンクが好きらしい。
織田さんに対して以前、ちっとも似合わないと口を揃えて言ってた速人と賢司が叩かれたのを思い出す。
その後、あんたはまさかそんな事思ってないよね、と睨まれて苦笑いで返事したっけ。

そして、妹尾さんは黒を着ている事が多い。
好きか嫌いかは・・・分からない、自分の口から聞いた事が無いから。

「杏子、お前こないだコンビニに居ただろ。声かけたのに返事なかったな」
「えーいつ?気付かなかった。でも変だね、熊さんみたいな賢司くんが歩いてたら気付くはずなのにー」
「あっはっはっ、そう熊よ、熊!あたしさ、なーんか似てると思ってたのよ!」

賢司は体格が良く、僕よりふた回りくらい大きい。
痩せこけている速人よりはさらにもう一回りくらい大きかった。
見た目は結構怖いと思ってたけど、打ち解ければ寧ろ愛嬌がある様にすら見えてくるから不思議だ。


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