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シグナル
【青春 恋愛小説】

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シグナル¨2¨-5

「お前、もう大学生だろ。着るものは自分で決めろよ」
「分かってるよー。でも毎朝起こしに来るし、自分で決めてたら遅刻しちゃうもん」

そうか、だからか。
単に喋り方がどうとかじゃなかったんだ。
俺は物事は直ぐに決めてしまうから、迷ってしまう杏子が苦手だったのかもしれない。

でも・・・それってちょっと勝手じゃねえかな。
杏子は好きで優柔不断になった訳じゃないかもしれないし、自分と違うからって苦手意識を持たなくてもいいだろ。

「こんなのはどうかな」

今度は自分で選んだ指輪をつけてみた。
シルバーの髑髏の、少しいかつい指輪だ。

「ちょっと怖いよー。似合ってるけど、似合いすぎて怖い」

杏子は代わりにシンプルなデザインの指輪を俺の指にはめた。
ちょっと飾り気が無い気がするが、これはこれでいいかもしれない。

「指先は力を抜いてシンプルに、ってのもいいでしょ」
「そ、そうだな」

俺は髑髏の方が良かったが、こっちも捨てがたい。
これじゃどっちが優柔不断か分からないな。
気に入ったし、丁度財布に余裕があったので杏子のお薦めの服を買った。
杏子はこれから学校に戻るらしく、ここで別れる事になった。

「悪いな、男物しかなくて。俺だけ楽しんじまった」
「ううん、楽しかったよ。ありがとう賢司くん」
「こ、今度はさ、女物があるところ、行こうぜ」
「うん!楽しみにしてるね!」


遠くなっていく背中を見ながら、胸に手を当てる。
・・・まだバクバクいってるな。さっきから鳴りっぱなしだぜ。

なんだか、今日はいつもと違う杏子の一面を見た気がする。
もし、もしだけど、付き合ったらいい感じになりそうじゃないか、俺達・・・

「なあに舞い上がってんだか。一緒に買い物しただけだろ、気が早すぎんぜ」

それにしても、まさか俺の方から誘うとはな。
たまたま空いてる時間が一緒で、軽い気持ちで言ったらついてきたんだ。
また迷うのかなと思ったがあっさり了承したので、たまには迷わない時もあるんだな。

何となくだが、もし遊ぶなら弥生を誘うだろう、と思っていた。
あいつは話しやすいし割りと迷わない方なんで、気が合いそうだと思っていた。
でも、俺より速人や成敏と話してる事が多いし、少し距離を感じる様になってたんだ。

意外と最初に思った事ってのは当てにならんのかもしれないな。


「あいつ、1人で戻れるかな。もう大学生だし平気だとは思うが・・・」


俺は、薄々自身で気付いていた。
弥生よりも杏子を気に掛け始めていたのを。
でも、あいつだけが気になるわけじゃない。弥生も、遥も、俺にとって大切な友達なんだ。
あいつらといるととにかく楽しい。ただ話してるだけで嬉しくなれる。
こういう関係が続けばいい、出来る限り長く。


頬を撫でる風が、さっきと少し違う肌触りに感じた。


〜〜続く〜〜


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