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シグナル
【青春 恋愛小説】

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シグナル¨1¨-2

「あの・・・」


立ち読みでもしようと思っていたら、声をかけられた。
僕と同じ紺色のスーツ姿の女の子だった。
OLさんかな、と思ったけどなんとなくスーツを着慣れてない感じがする。

「すいません、携帯落ちてませんでしたか?」

声は暗く早口だったので、切羽詰まってるんだな、という印象だった。

「いいえ、見てません」
「そう・・・ですか・・・」

それだけ言うと彼女は即座にコンビニを出てしまった。
果たしてどこにいくつもりなのだろう。


「あっ、速人」


すると入れ替わる様に速人が入ってきて、いきなり僕に耳打ちしてきた。

「なによ、いまの娘。お前大人しいふりして意外に手が早いんだな」
「そんなんじゃないよ。それより速人、さっきのメール」
「成敏ぃ〜、隠し事はいかんよ。高校からの仲じゃないか、なぁ。正直に言ってみなさい、あの娘はなんなんだ、なんて名前だ」
「僕が聞きたいくらいだよ。本当に何秒も話してない」
「よし、じゃあ本当かどうか確かめてくるか」


速人はコンビニから出ていったさっきの女の子のところに駆けていく。
僕は遠くから眺めているだけなので、何を話しているのか分からなかったけど、普通に話しているみたいだ。
同じ初対面でも僕とは大違いだな。あいつはもとから人見知りしないけど、羨ましい。

・・・あれ?あいつ、何か渡したぞ。あれは携帯かな。
頭を下げる彼女を見送ってから速人が戻ってきた。

「いやあ偶然ってのは面白いな、成敏」
「お前何で携帯を・・・」
「来る途中で拾ったのさ。ピンクだったから絶対女の子のだと思ったら、当たった」

それからすぐに賢司も到着し、やっと揃った。

「悪いな、遅れちまった」
「あーあ勿体ねえな。ついさっきまで可愛い娘がいたんだぜ、なあ」
「・・・うん」
「速人、お前またかよ。少しは落ち着いたらどうだ」
「馬鹿、携帯拾ったから返してやったんだよ。あの娘、磨けば光りそうだな。原石ってやつだ」
「分かった分かった、早く行かないと遅れるぞ」
「一番遅いやろうの言うことかよ、ふふんっ」


こうしてるとまだ高校生みたいだな。
僕はあまり話に参加せず、賢司と速人の話を聞いてばかりだ。
でも楽しかった。わざわざ僕から何か言わなくても、2人が楽しい空気を作ってくれるから。
担任の先生からも3人組だとあだ名の様に呼ばれてた。

でも、僕自身はそうは思っていない。賢司と速人、プラス僕、そういう括りだと思っている。

赤上賢司(あかがみけんじ)
青木速人(あおきはやと)

そして僕 黄田成敏(きだなるとし)

出席の時は名字が近いので2人は並んで呼ばれ、少し後で僕が呼ばれる。
当たり前といえば当たり前だけど、いつしかそれに慣れていた。
歩く時はいつも2人が並んだところをすぐ後ろからついていく。
これが、僕の位置なんだ。

電車に乗る前に思っていた事は、3人でいるという安心感で頭からすっかり消えていた。




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