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シグナル
【青春 恋愛小説】

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シグナル¨1¨-3

入学式が終わったのは11時過ぎだった。

「やぁっと終わった。はあぁ退屈だったー」

欠伸まじりにぼやく速人の頭を、賢司がくしゃくしゃと掻き回す。
「まだ授業も始まってねえんだぞ。今からかったるそうにしててどうする」

逞しい指の間からはみ出た茶色い髪が、太陽の光に照らされて妙に綺麗だった。
もう終わってしまったので今更いうのも変だけど、入学式に茶髪は似付かわしくない気がする。
賢司も一応染め直したのに、速人は結局変えないままだったんだな。

「長い話は嫌いなんだよ。10分も我慢できりゃ上等だろ」
「爆睡してやがったくせに。それより、ちょっとぶらぶらしないか。真っ直ぐ帰るのもつまらんしな」

僕は黙って頷いた。
何かする時は大体賢司が提案し、速人に続いて僕が返事する。

なんだか、あんまり新生活って感じがしないな。高校の延長、とまではいかないけれど・・・
入学式の話を聞き始めた時はわくわくしてた。でも、速人と同じ様に感じた。

「おう成敏、見てみろ」
「どこを?学校?」
「違う、ほらあの子。さっき携帯落とした子だよ」

速人の指差す先は、学校の門。
でも人がわらわらいてその子が何処にいるのか分からない。

「こっちに来たぞ。3人・・・いるな、どの子だ」

賢司も気付いたらしいが僕はまだ分からない。
ようやく確認できた時にはもう目の前まで来ていた。
3人ともスーツ姿で、揃って紺色のスーツを着ている。

「よっ、さっきの子だね。同じ大学だったんだ」
「あの、さっきはありがとうございました」

速人に向かってぺこりと頭を下げるその子。

「良かったね遥(はるか)。携帯無くしたら大変だかんね」

遥、と呼ばれたその子に髪を染めた子が話し掛けた。
速人と同じ茶髪だが色は落ち着いて黒に近く見える。
もう一人の子はにこにこ笑いながらそのやり取りを見ていた。
実際はどうか知らないけど、なんとなく見守っている様にも見える。

「ありがとね、えっとあなたが拾った人?」
「いやあついてるなぁ。善い事をしたらこんな可愛い子達が会いに来たなんて。俺、速人。青木速人ってんだ」

すると髪を染めた子が僕たちに目線を移したので、続いて軽く自己紹介をした。
速人はこうして話し易い雰囲気を作ってくれるから助かる。


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