EP.5 お兄ちゃんは超デカブツ-4
「じゃあ、そこに座って。描いてあげる」
「なんだ、触りたいんじゃないのか。いつでもウェルカムだぞ」
腰をリズミカルに動かしすぐ下のモノをぴたぴたと揺らす典明。
ひかりは冷静さを装いながら、モデルになる様に促した。
「格好良く描いてくれよ、特に腰のラインをな。自信あるんだここは」
「他の場所じゃなかったっけ。自信あるのって」
下半身はまったく見ない様にして顔だけに集中し、スケッチブックに線で写した。
輪郭を描いて目、鼻筋、そして唇を紙に写し、線を重ねて厚みを出していく。
「ひかりの真面目な顔が好きだよ。集中するともっと可愛くなるんだな」
「あんまり喋らないで。あと動かないで」
「分かった」
「何が分かったのよ!動かないでって言ってるでしょ!」
ひかりの言う通り、動くなと言われたのになぜ典明は相棒を握っているのだろうか。
典明の妨害にもめげず何とかまず一枚だけ下書きができた。
「出来たか、見せてくれ」
「まだ。取り敢えず描いただけだから。次は横向いて、あとそろそろ服着て」
「断る。最初のお願いは聞けるが、後のは嫌だ。モデルといえばヌードだろう」
「なんでいちいち腰振りながら言うの?分かった、服はいいから横お願いね」
やっぱり、着てくれなかった。
この変態が一度体から外したものを再び身に付けるなど、有り得なかったか。
「今はいいから終わったら見せろよ」
「うん、描けたら見せてあげるから」
次に典明の横顔をスケッチブックに描いていく。
ひかりは何度か見ているうちに、正面の顔とは違った印象になる事に気付いた。
まず、大きさが分かりやすいのだ。
正面からだとどうしても先端の裂け目、鈴口に注目してしまうし、角度的に部分の長さが把握しづらい。
しかし横からだと見易く、全体を見渡せるのだ・・・
(違う、見なきゃいけないのは顔!どっちの¨アタマ¨を見てんのよ?!)
どうやらいつの間にか顔ではなく竿を見ていた様だ。
ひかりは気付くのに時間がかかった事を、自分に対してつっこみたくなった。
(ちょっちょっと、何してんの私、これ!!)
しかも、スケッチブックの紙には典明の砲身が鎮座していた。
ご丁寧に下の弾倉まで綺麗に描き込まれており、生々しい皺まで刻まれている。
中身が膨張して突っ張った皮膚の質感が伝わってきそうな程、綿密に描き込まれていた。
もう下半身を意識しないどころの話では無い。
もしこの大砲を持ち主に見られては試し射ちをせがまれるだろう。
辻切りが刀の切れ味を試したがるのと同じ様に−
「そろそろ終わったか?」
典明が立ち上がりひかりに近付いていく。
(やばっ!!)
咄嗟に後ろにスケッチブックを隠したのを見て、怪訝そうに大砲の照準を合わせた。