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十字架を背負いし者
【ファンタジー 官能小説】

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十字架を背負いし者-5

朝が来た。
ドミニクはディンの腕の中で目を覚ました。
こんなにも安らいで眠り…穏やかな朝を迎えたのは久方ぶりであった。

だが…時は無情なまでにドミニクを追いたて来た。

小屋の周りで喧騒が渦巻く。
「なっ!なんだ!」
騒ぎに目を覚ましたディンが驚きの声を上げる。
そしてやはり目を覚ましたアリシアが怯え…シクシクと泣き始めた。
「すまん…ディン…アタシを追ってきた連中だ…」
いつの間にか現れた時と同じ格好になったドニミクが淋しそうに微笑む。
「何なんだ?ドミニク…」
泣き続けるアリシアを抱きしめながら心配そうに顔を歪めるディン。
「奴らは辺境騎士団…アタシは奴らにとっては裏切り者って事さ」
辺境騎士団の事ならディンも知っていた。
元々は辺境の地の警備の為に王国が組織した集団であったが。
その実態はならず者の集団とそう変わるものでは無かった。
「追われてるのか?」
ディンが度にドニミクの腕を掴みながら言った。
「まあな…」
心配そうなディンを余所にドミニクは小さく微笑んだ。
「隠れていろ!」
「そんな甘い連中じゃないさ…」
ドミニクはディンの腕を振り払うと小屋の外へと歩み出て行った。

十騎程度の駱駝に跨った辺境騎士団が小屋を取り囲んでいた。
素肌に皮の腰巻き、そして皮の胴鎧。
その姿は蛮族となんら変わりはなかった。
「さんざ可愛がってやったのに裏切りやがったな!」
頭目と思しき男が駱駝の上から牙を剥いた。
「貴様の下衆さ加減に飽き飽きしただけだ」
ドミニクも腹は座っているこの野蛮な集団相手に怯んだ様子は微塵もない。
「ドミニクゥゥゥゥ!」
頭目が蛮声と共に手にした剣を振り下ろした。
その切っ先はドミニクの首筋を目指している。
寸ででかわすドニミク。
だが剣先がドミニクの左眼を掠めた。
左眼から血の涙を流し…残った右眼に闘志を込め頭目を見上げるドミニク。
次の瞬間、剣を構えたディンが二人の間合いに飛び込んできた。
「ヤロウぅぅ!」
頭目に切りかかるディン。
「バカが!」
だが横に凪いた頭目の切っ先の方が早かった。
「ディンンンンン!」
倒れたディンに抱きつくドミニク。
「ドミニク…」
口から血を吐いたディンが薄く笑う。
「ディン…ディンしっかりしろ…」
ディンにすがりつくドミニク。
この女でも、こんなになるのかと言うくらいに取り乱している。
だが…それも一瞬だった。
「貴様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
ユラユラと闘志を漲らせて立ち上がるドミニク。
その手にはディンの剣が握られていた。
頭目を始め辺境騎士の一団はドミニクの闘志に完全に飲み込まれていた。
砂塵が舞った。
剣が煌く。
血飛沫が舞った。
ドミニクは鬼神の舞を舞った。
そして肉塊と化した騎士達が残った。


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