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十字架を背負いし者
【ファンタジー 官能小説】

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十字架を背負いし者-6

「ディン…ディン!」
返り血と己の血で染まったドニミクは砂漠を這う様に倒れたディンに擦り寄った。
「ぶ…無事か…ドミ…ニク」
ディンは息絶え絶えであった。
「どうして…どうして…」
ドニミクの残った右眼からは涙が溢れ出る。
「お…俺も…アンタと同じさ…それに…それに…ゴホッ」
弱々しい声のディンが血の咳をする。
「あぁぁぁ…神さま…」
ドミニクはディンの傷口を押さえながら生まれて初めて神に祈った。
「ド…ドミニク…愛してる…」
ディンの生命が終わった瞬間だった。
「起きろ…ディン…起きろ…おまえが死んだらアリシアはどうすんだ!」
「アタシはどうすんだ!」
荒涼とした砂漠にドミニクの悲痛な声だけが響き渡っていた。

ディンの墓に花を手向けるアリシア。
さんざ泣きはらしたせいか今では涙も枯れ声も出ない程だった。
「さぁ…行こうアリシア」
左眼を失ったドニミクが父を失ったアリシアの手を取った。
「ディン…アリシアは私は立派に育てるからな…」
愛する男の顔を思い描いてドニミクは小さく微笑んだ。
釣られたのかアリシアも僅かに微笑む。
その胸元にはディンの形見のクロスが揺れていた。


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