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過ぎ行く日々、色褪せない想い
【学園物 官能小説】

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過ぎ行く日々、色褪せない想い-33

**――**

 家の前にはさらに和子の姿があった。
 彼女は私服であり、二人に気付くと黙って頭を下げた。
「和子ちゃん、どうしてここに? っていうか、学校も休んで……」
「え? 学校休んだ? どういうこと?」
「すみません、今日は辛くて学校さぼったんです。でも、なんか気になって……」
「気になるって……」
 弘樹が真実を知る方法は和子から聞く以外に無い。考察する必要もないほど単純明快なことでも、悠には理解ができなかった。
「先輩は知ってたんですよね、和子とあの野郎のこと……」
「ああ」
「どうして黙っていたんですか?」
「いや、いえるはずないだろ。プライバシーとかそういうレベルじゃないし」
「でも、俺には……」
「ん〜、そういうのはしょうがないんじゃないのか? ほら、好きなお前だからこそ、言えないっていうか、知られたくないことってあるだろ? それに、俺に話したのだって、美琴が狙われてるからであって……」
 言いながら何かがひっかかる。和子と悠にとって牧夫は敵。その構図は至極当然なのだが、何か抜けているというか、忘れていることがあるような、そういう気持ち悪さがある。
「とにかく、俺は和子ちゃんにもっと信じてもらいたかった」
「弘樹君……」
「いや、俺も人のこと言えないよね。先輩とのこと疑ったし……」
「そういえば、どうしてお前昨日あそこに居たんだ?」
 ようやく話がひと段落したところで、悠は昨日気になっていたことを口にする。
 学生、特に高校生がうろつくには、具合が悪い場所。なのに何故彼が居たのか。自分の想像が当たっているのか、気になっていた。
「ええ、それなんですけど、あの牧夫って奴と俺も会ってるんですよ」
「え? お前も家庭教師を?」
「いえ、違います。あの日、先輩と和子ちゃんが一緒に大学に行った日のことです。俺、すごく気になってて、こっそり着けてたんです」
「へぇ……」
「そんで、電車の中のことも知ってたんです。でも、その理由も全部和子ちゃんに聞きました。牧夫と一緒だったんですね」
「ああ……、まぁ、そうだけど……」
 とはいえ、後輩の彼女を抱き寄せた事実は変わらず、苦いものがある。
「それで、先輩達が走って逃げた後、追おうとしたんですけど、見失ってしまい、和子ちゃんの名前をぼそっと、本当にぼそっと言っただけなんですよ? それを牧夫が聞いていたらしくって、あいつ、俺に二人のことを教えるよと言われて、それでほいほい着いていってしまって……」
 嫉妬の助けもあってか、弘樹はすっかり牧夫に騙されてしまったらしい。
「で、和子ちゃんは昔の教え子で、最近は変な男と一緒に大学に来ては僕に嫌がらせをしている。もし何かあったら君にも教えるからって、連絡先交換して……」
「なるほど、それで昨日はあんなところに呼び出されたわけか……」
「はい……。言われたとおりのところを探したら先輩の自転車があって、さらに和子ちゃんの声もしたしで、もうなにも信じられないっていうか、いやになって、俺は……」
「いや、誰がどう見たってアレは黒だよ。勘違いというよりは嵌められたんだよ。俺もお前もさ……だから、もう謝らなくていい」
「はい、先輩、すみません」
「いや、だから……」
「そうでしたね。でも、俺は……」
 後輩の誤解はあっけなく解けたわけだが、本当のところはどうなのだろう。
 和子のことだから、例の証拠を手に彼に本当のことを教えたのかもしれない。だとしたら、彼女にとって苦渋の選択だったであろう。恋人にかつての男とのことを聞かせ、場合によっては隠していたいことをさらけ出したのだから……。


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