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過ぎ行く日々、色褪せない想い
【学園物 官能小説】

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過ぎ行く日々、色褪せない想い-32

「ごめんね。これからはもう話しかけないでね……さよなら」
 低く消え入りそうな声。このまま永遠に別れかねないような言い方に、悠は愕然としていた。
 どうしてこうなったのか。
 全ては牧夫がしくんだであろうこと。
 自転車も、キャスティングも全て……。時間的なタイミングはきっと悪魔の成した偶然の産物。そして、この結果も……。
「俺は……待ってくれ、美琴……」
 玄関に消える美琴は振り返るそぶりもない。
 しばらくしても二階の電気は消えたまま。
 悠は冬を迎えようというこの寒空の中、しばし呆然と立ち尽くしていた。

**――**

 気持ちが重い。身体も。
 寝不足のせいで授業中になんども居眠りをしてしまった。
 英語の教師に教科書の角で叩かれたあと、「一本」と言われてしまう。
 爆笑するクラスメートの手前、愛想笑いを返したが、羞恥など追いつかないほど、悠の気持ちは消沈していた。
 振られたぐらいで……。
 以前、級友が失恋をしたと聞いたときは、対岸の火事とばかりに励ましの言葉をかけていたが、いざ自分の立場となると、これほどまでの破壊力があるとは思わなかった。
 美琴との関係は絶望的。和子に証言を頼めるかといえば、それも同様。自らが不幸であるというのに、他人の恋路などに構っている暇もなし。というよりも、これ以上、和子に心労をかけたくない。
 だが、だからといってこの状況で良しとするつもりもない。
 既に嫌われているのなら、いっそのこと、牧夫を……。
 ――いや、だからそれじゃあ和子ちゃんが……。
 思考の堂々巡りを繰り返す悠は、今日何度目かわからないため息をついたあと、道場へと向かった。

 部室の前に来たとき、誰かが話し合っている声が聞こえた。一人は弘樹で、もう一人は部長。声の質から重い話をしているようにみえるが、もしかしたら例の痴話げんかのことかと、ドアに耳をつける。
「考えなおしてくれないか? いきなり止めるなんて、そんなこと……」
「いえ、自分ももう考えました。というか、これから部に迷惑をかけるわけにもいきませんし……」
「部に迷惑って、別にたかがケンカの一つか二つだろ。よくあることさ。悠にだって落ち度があるんだしさ」
「いえ、先輩は悪くありません。というか、全ては俺と和子の問題です」
「でも、なぁ……」
「すみませんが、俺は部を辞めますんで、さようなら……」
「いや、とりあえずこれは預っておくけど、まぁ、考え直したら言ってくれよ……」
 話は決着したようで、椅子を引く音がした。
 弘樹がやってくるので悠は慌てて隠れようとするが、部室棟にそのような都合のよい場所はない。そして、ドアが開き、弘樹が驚いた様子で彼を見る。
「ああ、弘樹。なんだ、その、部活辞めるのか……、そんなことしなくても……」
 必死にさりげなさをアピールする悠だが、それにごまかされるような弘樹でもない。
「先輩、いいところに居ましたね……。これからちょっと行くところがあるんで、案内してください」
「まぁいいけど……って? おい、行くところがあるんで案内ってなんだよ」
「いえ、先輩の家なので、案内をお願いしたいんです」
「へ?」
 突然のお宅訪問に間抜けな声を上げる悠だが、弘樹はそれに構わずに彼の手を引く。
「おいおいおい、ちょっと待てよ、俺は部活……」
「部活と彼女、どっちが大事なんです?」
「どっちって、お前……」
 引かれる手を振り払い、弘樹を見る。彼は何か決心をしているらしく、力強い瞳で悠を見ていた。
「先輩は来てくれますか?」
「いや、いいけど、でも……」
 向かう先が悠の家でも、目的地は美琴の家だろう。そして、相手は牧夫。
 彼もまた、真実を知ってしまったのだろう。
「お願いします……」
「ああ、わかったよ」
 彼がどうするつもりなのかはわからないが、ただうじうじ悩むだけの自分と比べればずっと潔い。それならば流れに乗じて全てを明らかにしてしまえばよい。
 悠は自分を卑怯な奴と思いつつ、彼を利用することにした……。


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