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過ぎ行く日々、色褪せない想い
【学園物 官能小説】

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過ぎ行く日々、色褪せない想い-25

 りんごーん、かんこーん……。

 部室にまで響く鐘の音。続いてざわめく声が聞こえだす。
 それは数分と待たずに部室棟にも訪れ、廊下を行きかう足音がする。
「急げる?」
「パソコンさんに言ってください……」
 あと三十秒。
 気持ち的にはもう十分なのに、未だに作業は継続中。
 その間も足音は大きくなり、そのうちの一つが徐々にこちらに近づいてくる。
 ――どうしよう……。
 悠一人なら窓から飛び降りることで難なく逃げ切れる。しかし、和子も一緒なのだ。
 その時、隣のドアが開いた音がする。この部屋に向かっていたと思われた足音は、実は隣に向かっていたらしく、ドアに耳を当てても、人の気配はない。
「焦った……」
 ふうとため息をつく悠を横目に、和子はUSBメモリを取り外す。
「終わりました、行きましょう……」
 彼女が何を終えたのかは詳しくはわからないが、何かあったときの切り札を手に入れた事実に、十分に収穫があったといえる。
 急いで部室を出る悠と和子。
 ドアを開けると、すがすがしいほどに寒い空気が彼らを出迎える。
 ただ……、
「やば……」
 帽子を目深に被りなおす和子。階段のほうからは、男子の一団がやってくる。
 彼らの足取りは途中で曲がる様子もなく、徐々に距離が狭まっていく。
 ――くそ……!
 微妙な状況だ。
 今、悠たちがいる場所は二階の通路の一番端。部室こそ出ているものの、どうしてそのドアの前にいるのかは、不自然極まりない。さらに言えば、彼ら映像研究サークルの所業からして、部外者を警戒するのは必然。
 気付いた一行は足早に二人の傍へとやってくる。
 悠たちは視線を下にして、階段に向かう。
 そして、今まさにすれ違おうとしたところで道を塞がれる。
「なんでしょうか? 通れないんですけど……」
 太めの男は自然な態度で道を塞いでくる。
「あのさあ、さっき俺らの部室から出て行かなかった?」
 妙に甲高い声に苛立ちながらも、ことを荒立てまいとする悠。
「いえ? 知りませんよ? 見間違いじゃないですか?」
 苦笑交じりに応えるも、相手はそれで納得しておらず、通せんぼされたまま。
 これでは埒があかないと、悠は和子の手を取り、強引に脇を通ろうとする。
「てめえ、逃げんじゃねえ!」
 太めの男は怒ったらしく、脇を通ろうとした二人にラリアットを食らわせるように腕を振るう。
「きゃっ!」
 その腕が和子にあたり、帽子が落ちる。
「てめえ!」
 先ほどの動画のこともあり、一瞬でかっとなった悠は、太めの男のあるかないかわからない首に腕を押し付け、そのまま勢い任せに壁に押し当てる。
 運動部の彼と運動不足の男では勝負は明らか。太めの男の仲間は加勢しようとするが、悠の鋭い視線で睨まれると、誰も前に出ようとしない。
「お前、女の子に何しやがるんだ!」
「ぐ、くるしい……」
 腕一本、力任せに押し付けられているだけのこと。体重で考えれば不利なのは悠。しかし、勢い、気迫任せの不意打ちに、太めの男はグロッキー寸前。
「謝れ!」
「先輩、もういいですから、早く行きましょう……」
「だめだ、謝れ!」
「ぐふぅ、ご、ごめんなさい……」
 ようやくそれだけ言わせると、悠は太めの男を解放したあと、おまけとばかりに一発殴る。
「どけ……!」
 数で負けるも気迫で勝る悠の一喝に、映像研究サークルの面々は道を譲る。
 悠は和子の手を引くと、足早に階段を目指した。


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