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過ぎ行く日々、色褪せない想い
【学園物 官能小説】

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過ぎ行く日々、色褪せない想い-24

 やがて扉が開き、誰かが入ってくる。白のニーソックスとブルーのプリーツスカートが見えた。
 そしてもう一人。こちらは黒のスラックス。
 視界は下向きで、顔が見えない。
 女の子と男はしばらく談笑したあと、英語で話し出す。たどたどしいそれは、お決まりの定型句ばかりなので、教科書や参考書のものだとわかる。
 おそらくは、家庭教師の風景だろう。つまり、この男は牧夫ということ。
 ねっとりとした唾が悠の口内に溢れる。
 もし彼の思うようとおりであれば、この動画は……。
 和子はシークバーを小刻みに動かす。
 その動画は、勉強の様子を隠し撮りしていただけで終わっていた。
 何も不自然なところは無い……のだろうか? そもそもどうして盗撮をしているのか? それが一番不自然なところ。
 動画が最後まで再生されたところで、自動的に次の動画に移る。
 ナンバリングのあと、暗転。そして、再び例の部屋。先ほどと何も変わらない。
 そこまでは。
 やってきた女の子は、今度は最初からベッドに座っていた。
 脚をぶらつかせ、そのたびに太ももの奥を覗こうとしてしまう、悲しい悠。
 けれど、その期待はすぐに応えられ、牧夫と思しき男が彼女をベッドに押し倒す。
「なっ!」
 強姦の類ではないが、それに類するもの。少なくとも彼女はこの撮影のことを知らないであろうし、知っていたとして、それを大学のサークルのパソコンに入れることを許可するはずが無い。
 和子はさらにシークバーを動かし、動画の内容を確認する。
 ベッドに横たわる女の子はアイマスクをしており、男が撮影していることに気付いている様子もない。
 さらにジャンプしたところでは、よつんばいになった少女が後ろから男に突かれ、身体を仰け反らせていたり……。
「おい、和子ちゃん……もう十分だろ……」
 これがアダルトビデオの類なら、悠も気兼ねなくというわけにはいかないが、後ろめたさもない。けれど、にじみ出る悪質さ、異様さに、倫理観が拒否する。
「はい……、すみません……」
 彼女はようやく動画を消す。
「どうする? これなら証拠になるだろうし……」
「できませんよ……。だって、このことが明るみになってしまえば、被害者は皆好奇の視線にさらされます。そういうセカンドレイプのほうが怖いです……」
 ファイルは複数。当然被害者も多数。事件を明るみにするのは簡単だが、それがどの程度の価値があるのだろうか?
 和子のように立ち直っている子もいれば、そうでない子もいる。
 悠は浅はかな復讐心を抑えることにしたが、冷静になることができない。
 それに、
「なぁ、もしかして美琴のも……」
 せめて彼女のデータだけでも削除したいと、和子をせかす。
 安堵すべきことなのか、最新のファイルは七月までしかない。
 時期的にはまだ撮影されていないように見えるが、ここ以外に保存場所がないとも言い切れず、予断を許さない。
「正直、ここまで酷いことをしていたとは思いませんでした……」
 和子はファイルを調べながら、呟く。騙されていたとはいえ、一度は好意を持ち、抱かれた相手。信じたい気持ちが今もあるかといえばそうでもないだろうけれど、限度を超えている。
「証拠だよな。とりあえず、なんかディスクとかに保存できる?」
「何年前の人間ですか……、今はこういう便利なものがあるんです……」
 和子はガムのケースみたいなものを取り出すと、パソコンの脇にそれを差し込む。
「なにそれ?」
「USBメモリぐらい知っていて損はありません。それより……、なんかすごく遅い……」
「え?」
「大丈夫かな、誰か戻ってきたら……」
 てきぱきと動作する彼女だが、その作業の工程を知らせるバーは、あと五分かかると示している。
「大丈夫だよ、五分ぐらい……」
 部屋に入ってから既に十数分たっている。その状況であと五分といわれると、たかが三百秒といえど、長く感じてしまう。
 さらにいえば、不法侵入者でもある。
 いくら彼らが犯罪をおかしているとはいえ、それはそれ、これはこれ。特に、牧夫達に見つかれば、ミイラ取りがミイラになりかねない。


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