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『深夜のコンビニ』
【OL/お姉さん 官能小説】

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『スープ』-3

「ありがとうございました」

タクシーが私のアパートの近くに停車すると、私は先輩にそう言って頭を下げた。

「アパートの前まで送ってくよ。運転手さん、ちょっと待ってて」

先輩はそう言うと自分もタクシーから降りた。

「あ、じゃあここで…今日は本当にありがとうございました」

二階建てアパートの階段前で私は立ち止まった。

「落ち込まずに、明日もちゃんと会社来いよ!」

先輩の言葉に思わず笑みがこぼれる。

「ちゃんと行きます!おやすみなさい」

顔を上げると先輩と目が合う。「あれ?」と思った瞬間、先輩の顔がすごく近くにあった。そして「あ、キスされる」と思った時にはもう唇に柔らかい感触があって、次の瞬間には離れていた。

「おやすみ」

びっくりしている私に何でもなかったように先輩はそう言うと背を向けて帰っていった。

(今の何…?)

先輩の後ろ姿が消えてから指先でそっと唇に触れてみる。しばらくぼんやりしていた私はガシャン!という音で我に返った。
音はどうやら階段の上から聞こえてきたようだ。

「田中くん?」

階段を上ると私の部屋の前に田中くんが立ちつくしていた。

「あ、あ、菜々子さん…」
「どうしたの?こんな遅くに…」
「俺、あの…これ渡そうと思って…えっと…お仕事お疲れ様です!ご、ごめんなさい!おやすみなさい!」

足元に落ちていたビニール袋を拾って私に手渡すと田中くんは目も合わさずに走っていってしまった。

(今の見られちゃったんだ…)

鍵を開けて部屋に入り、電気をつけてから田中くんに貰った袋の中身を見てみる。
そこには数本の栄養ドリンクが入っていた。田中くんが袋を落とした時の衝撃のせいだろうか。一本は割れてしまっていた。




その夜以来、田中くんからメールが来なくなった。読むのも面倒だなんて思っていたくせに、いざ田中くんからメールが来なくなったら何だか落ち着かない。
小暮先輩とは何にもなかったように普通に接している。先輩の態度も何も変わらない。あんなことされてもっとドキドキするようになるかと思ったのに、全く逆だった。
今の私は少し前までとは打って変わって、田中くんのことで頭がいっぱいになっている。




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