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『深夜のコンビニ』
【OL/お姉さん 官能小説】

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『スープ』-9

「ん…」
「あ、菜々子さん起きた?」

目を開けるとすぐ目の前に田中くんの顔があった。

「ちょっと待ってて」

私は目をこすりながら起き上がる。窓からは明るい日差しが差し込んでいて、本日が晴天であることを知らせていた。ベッドサイドの時計は九時半をさしている。べとべとになったはずの私の体はきれいになっていて、タオルケットにくるまっていた。

「はいどうぞ」

部屋に戻ってきた田中くんにマグカップを差し出される。

「コーンスープだよ。まあ市販の素を使ったやつだけど」

一口飲むとやさしい味が口中に広がった。体がじんわりと暖まり、思わず頬が緩む。

「おいしい」
「よかった。これお湯じゃなくて牛乳で作るとおいしいんだ。ちょっと塩胡椒するのもポイント」

得意気にそう語る田中くんに違和感を覚える。

「あれ?田中くんって料理できたっけ?」
「最近やり始めたんです。そしたらはまっちゃって」
「何でまた料理なのよ」

田中くんが私の隣りに座る。

「菜々子さん、仕事ほんとに忙しいじゃないですか。いつか倒れるんじゃないかって心配で。お互い一人暮らしなんだしその時俺が看病できないと困るでしょ?だから」

その言葉を聞いて私は思わずため息をつく。

「あ、呆れました?」
「違うの、これは安堵のため息。田中くんがどんなに大切な存在か気付けてよかった」
「え?」
「今まで嫌な思いさせてほんとごめんね」

私は田中くんの目を見つめて言った。

「これからは田中くんに嫌な思いさせないように努力する。忙しくても田中くんを不安にさせないように、田中くんのこと大好きだって気持ちをちゃんと伝えるようにするから」
「菜々子さん…」
「だから……今日も夕飯作ってもらってもいい?今日は魚が食べたいかも」

私がそう言うと田中くんが笑った。

「なんかうまく使われてるなぁ俺…まあいいですよ」
「やった!田中くん大好き!」

再びスープを飲み始めた私の隣りで田中くんが今晩のメニューについて話し始めた。

それはそれはとても幸せな一時で、昨日の朝には想像もできなかったものだった。

明るい太陽の日差しと、おいしいコーンスープと、田中くん。

スープを飲み終わったら、お風呂に入ってメイクしてお気に入りの洋服を着よう。それから田中くんと一緒に散歩に出かけよう。
途中でテイクアウトの料理を買って公園で食べるのもいいかもしれない。だって今日はこんなに天気がいいのだから。
それから帰りにはスーパーによって今日の夕飯の材料を買いに行こう。あ、昨日汚しちゃったカーペットも買い換えたい。

鮭のムニエルがいいか、ぶりの照り焼きがいいかを真剣に悩んでいる田中くんに相槌を打ちながら、私はすぐ側にある幸せに気付けた喜びに浸っていた。


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