「熟女と内気な高校生」-4
「はい、これあげるわ。遠慮しないで、まだたくさんあるの。持ってきてくれた本はちゃんと健一に渡すから。」
田中は本を受け取りながらもまだうつ向いたままだ。お世辞にもハンサムとは言えないが、案外憎めないかわいい顔をしている。本来この年頃の男の子というのはこれが普通だろう。健一のようにあまりにも大っぴらなのは可愛いげがない。
「そんなに考え込まないで。好きな女の子に見られたんならショックだろうけど、私みたいなおばさんに見られるくらいどうってことないでしょう?男の子なんだからどんと胸を張ってないと女の子にモテないわよ。」
「いいんです。どうせ僕は女の子に嫌われてますから。諦めてます。」
そんな田中の情けない言葉を聞いて、はぁぁ… と淳子はため息をついた。
このタイプの男子はみんなこうだ。あまりにも自分に自信がなさすぎる。純情でおとなしい、そこまではいいのだが、異性の事となると、あまりにも消極的になりすぎる。そのくせ思春期の男子だけに性欲だけはしっかりあるものだから、ポルノ雑誌やパソコンの中の女とだけしか付き合えない。
健一のように度が過ぎるのも困りものだが、田中のように女性に対して引っ込み思案で、全く女慣れしていない、というのも考えものだ。母親がいないというのも原因の一つかもしれない。
「ほら、いつまでもそんな顔してないの。男なんだからSM雑誌だってなんだって堂々と見ればいいのよ。年頃の男の子なんだから女の裸が見たいのは当たり前。なんだったら私のを見せてあげてもいいわよ、こう見えても多少スタイルには自信あるんだから。」
そう言いながら淳子は、右手を頭の後ろに、左手を腰に当ててポーズを作って見せた。もちろん本気で見せるつもりはない。田中にはっぱをかけるつもりでそう言ったのだ。
この頼りなく、男のくせにウジウジしている田中に、淳子は猛烈に母性本能をかきむしられた。
健一は放っておいても勝手にすくすくと育つ男だ。だから健一に対しては、いつも微笑みながら見守ってやる母性愛を感じる。だが田中は、あれやこれやと世話をやいてやりたくなるような母性愛を感じるのだ。
それから30分間、淳子は田中を散々励まし諭し、説教して家に返した。
「いい?もし溜まっちゃってどうしようもない時はおばさんのとこへ来なさい。おばさんがおちんちんしごいてあげるから。」
任せなさい、と、淳子が胸をとんと叩くと、田中はやっと笑顔を見せて、又丁寧に挨拶をして帰っていった。
「やれやれ、父親がいないのも大変だけど、母親がいないのも大変ねぇ。さて、どら息子の為に夕食でも作りますか。」
田中を見送った、玄関先で大きく背伸びをして、淳子は台所へ入った。