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長い夜
【大人 恋愛小説】

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長い夜 (五)-3

真人のマンションへは、一度だけ、真人が忘れ物をしたときに付き合って、前までは行ったことがあった。
場所はたぶん、わかるだろう。
鍵も失くした時のために、ある場所に合鍵を置いてあると、以前に聞いたことがあった。

一応、チャイムを鳴らして、入りますよ。と声をかけてドアを開けた。
部屋は真っ暗で、カーテンの隙間から街頭の明かりがぼんやり見えた。

「真人、いる? どこ?」 
しばらく暗がりで目を慣らしていると電気のスイッチが見えた。

「電気、つけるよ」
そう伝えてからスイッチを入れた。

パッと明かりがついた部屋はワンルームだけど広い感じがした。
広いけど、ほとんど画材で乱雑としていて、生活感はない。
その片隅のソファに丸まっている真人がまぶしそうな目で見上げた。

「あー、ほんとに来ちゃったよー。ダメだって言ってるのに」
普段から少しクセのある髪がくしゃくしゃになっている。

遼子は近づいて、真人の額に手を当てた。
「熱は?計った?」

「んー、まだ。 だけど、夕方よりぜんぜん気分いいから下がってると思う。」

計って、と真人に体温計を渡すと、買ってきたものを冷蔵庫へ入れるね
と声をかけた。

冷蔵庫の中は、空っぽに近かった。
部屋は乱雑とも几帳面ともいえない。普段はもう少し整然としているのだろうと思う。

ピピピ・・・
体温計を真人から取り上げると電灯にかざして見た。

「37.6゜Cか・・・、微妙なところね。薬のんだの?」
 
「あれ・・・飲んだ」
市販の鎮痛剤、解熱作用もある。

「汗かいた?」

「ボトボト・・・」

「じゃあ、熱は下がりそうね、良かった・・・。真人、着替えはどこ?」

部屋を見渡したが、クローゼットらしきものも、整理ダンスらしきものもない。
ジーンズやジャケットはそのままソファに引っ掛けてあるだけだ。

「あの袋の中・・・乾燥からだしたまま、畳んでない。」
遼子が大きめの手提げ袋に近づくと

「そっちじゃなくて!そっちはまだ洗ってないやつ・・・その向こうの袋」
どうやら、使用前と使用後に袋を分けてランドリーへ通ってるらしい。
なるほどね きちんとしてるじゃない。
そう思いながら、無造作に突っ込んである袋からシャツとパンツを出した。


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