教師の情事(1)-3
両親に泊まりの補習を話しかけるととても喜んだが正之には喜ぶ気になれなかった。
よりにもよって憎悪している女教師である。そのため泊まりの補習のために学校に行く足も重かった。
荷物を持って夏の暑い日に正之は学校に来た。しかし学校の門は閉ざされており、
しかも外壁塗装の工事をしていた。
(・・・?)
すると後ろから自動車のクラクションが2回鳴った。振り向くと車には佐和子が乗っていた。
ウィンドーを開けると手で車に乗れと合図している。
(一体何だよ。補習はどうなったんだよ。)
そう思いつつも正之はしぶしぶと車に乗った。
正之はドアを開けて助手席に乗り込む。そして佐和子の姿を見た時とても正之はとてもびっくりした。
佐和子はこんがりと小麦色に日焼けをしており、黒いタンクトップに女性用のジーンズを履いていた。
さらには眼鏡はかけておらず、黒く大きい瞳が晒されていた。
それは決して教室では見せない佐和子のもう一つの姿だったのだ。
「さてと、じゃ行こうか。」
「え・・・?どこへ?」
「補習よ。」
「どこで補習をするんですか?」
「私のマンションよ。」
「ええっ!?」
「何を驚いてるのよ?学校は外壁塗装工事で入れないわ。図書館は今の時期は閉館してるし、
私のマンションしかないじゃないの。」
佐和子はクスクス笑いながら車を走らせた。
正之は不安にかられた。
(一体何が起こるんだ・・・?)
車が佐和子のマンションの地下駐車場に入る。佐和子のマンションは8階建てのマンションだった。
エレベーターで部屋に入るとそこはまさにトレンディドラマに出てくる女性の部屋そのものだった。
「じゃ、そこに座って。今飲み物持ってくるわ。」
正之は大人しく座るも不安で不安で仕方なかった。
ジュースをコップに二人分を持ってくると机からあらかじめ作っておいたテストを渡す。
「では最初にこれを解いてね。時間は30分。いいわね。」
正之はあらかじめ持ってきた文房具をバッグから取り出すと解き始めた。
正之は不安になりながらも解答していった。テストは3回出されるもすべて満点だった。
「すごいわね。それだけの学力があれば大学も一発で受かるわ。」
「でも・・・どうせ思い通りの大学には行けませんし。」
これを言った途端正之はしまった!と心の中で叫んでしまった。
また中学時代の悪夢が走馬灯のように脳裏を過ぎった。
「どうしてなの?先生は何も言っていないわ。」
「・・・。」
「正直に答えて。何で先生をそんなに恐れるの?」
「・・・。」
「野村君。」
正之は観念して中学時代の管理教育と女性教師の体罰を話した。
その目には涙が浮かんでいた。悔し涙と情けなさの涙と。
「そうか・・・。それで女性教師を憎むようになったのね。」
「はい・・・。」
「こら、男でしょ。泣かないの。でも私はその先生は許せないわ。
生徒に体罰なんて絶対に許せない。その教師はあなたなら反抗できないと思っていたのよ。
私は認めない!」
「先生・・・。」
「大丈夫よ。私はそんな事はしないわ。確かにM県の小中学校は管理教育が厳しいけど
高校はプライバシーとか恋愛とかは許されるわ。よほどの事をしない限りね。」
恋愛・・・。その言葉は正之にとっては初めて聞く言葉だった。
正之のいた中学ではもちろん恋愛は禁止されていた。ばれたら体罰が待っていた。
この言葉を聞いて正之は佐和子なら心が許せると思った。