イジメテアゲル!-45
「ミーちゃん、本当に風邪引いちゃうよ?」
初夏の気候ならその心配も無いだろうと思いつつ、興奮が収まりつつある英助には目のやり場に困る。
「風邪ひいても平気ですぅ。英助君に看病してもらいますから」
「その時はお薬じゃ済まないよ」
「へーきです。なんならお注射してもらってもいいです」
鈍い英助も注射の意味を解し、ふっと息を吸い込むと、しばらく呼吸を忘れてしまう。
「それは、駄目だよ」
言葉とは裏腹に、セックスを意識した陰茎は、もたげていた鎌首を立たせてしまう。
「注射の準備はできてますねぇ〜」
由美は手を合わせて喜びを表す。
「あ、私ったら……、英助君ははしたない女の子は嫌いですか?」
はしゃぎすぎた仕草を後悔したのか、急に萎んでしまう由美。
「そんなことないけど……」
むしろ身のまわりの女子は既にはしたない何処ろじゃない関係を結んでいる。
今ここで由美を抱いてしまうことに抵抗が無いわけではない。ただ、上目遣いに英助の機嫌を伺うような態度に、不覚にも興奮してしまう。その大半は最近芽生えた征服欲。
「お薬飲ませておいて、注射はダメなんですか? しっかり治療しないと、私、おかしくなっちゃいますよ」
首を傾げ、一指し指を唇に当てる。上気した頬を汗が滑る。髪が乱れ、ポニーテールが解けてしまう。
長い前髪が唇に触れると、彼女はそれを加える。
「ねぇ英助君、気付いてた?」
「ゴメン、なにが?」
「私の髪型……」
「長いほうが似合ってたよ」
「そんなのダメ。だって、美奈ちゃんと同じはやだもん。毎日ね、英助君がどの髪型がきにいるのか、すごく気にしてたのに、全然分かってくれないよね」
毎日ヘアーチェックの意味にも意味があった知らされ、改めて自分の鈍さを痛感する。
「どうせ英助君は美奈ちゃんしか見てないんでしょ?」
「そんなことは……」
「脅迫しちゃおっかな。トイレでエッチなことされたって。困るよね、英助君」
唇の端っこを上げて意地悪く微笑む。こんなときでも故悪魔的な魅力が溢れる彼女が憎らしい。
「そんなことになったら俺は停学、さもなくば退学かも。もうミーちゃんとも会えなくなるね」
「はぅ、それは困ります。せっかく英助君と仲良くできると思ったのに……」
「わがまま言わない?」
「はい、もう脅迫なんかしません。取り消しますぅ」
「反省しているみたいだけど、ミーちゃんは悪い子だから、しっかりオシオキしないとね」
「オシオキ、やですぅ……」
「ダーメ、すごく痛い注射をします」
便座に腰を下ろしたままの彼女の頭を抱き寄せ、解けた髪を撫でる。
「お注射? ……はい、由美は悪い子だから、しっかりオシオキしてくださいね……」
由美は彼の大きな背中に腕を回すと、嬉しそうにしがみ付く。