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近距離恋愛
【学園物 官能小説】

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近距離恋愛−vol.2-3

「今日中ね……。」
多分、はたから見れば、不審者に見えるであろう。
勇の家の前をウロウロしていた。
だって、浮気をしてお互い様なんだから!と言われた男に、別れ話なんて……。
普通に別れ話だけでも、気がめいってくるでしょ?

「ふぅ……」
深呼吸をして、一息置いてから、今日返すと決めた合い鍵で、勇の部屋の扉を開けた。
「おじゃましま……」
玄関で、靴を脱ごうと下を見て、私の物ではない、赤いパンプスを見つけた。
まさに、バッドタイミング。
「藍?」
のれんで仕切られた、8畳程のリビングの奥から勇の声がする。
ここまで来たら、覚悟決めなきゃ!

意を決して、のれんを割って入る。
そこには、私の定位置だった、丸いテーブルの壁側に、多分、こないだの浮気相手であろう、彼女がいた。
綺麗に化粧をして、敵意剥き出しといった感じで私を睨みつけている。

「あー、外、行く?」
罰が悪そうに、勇が頭を掻きながら言った。
「ここでいい。」
凜と言ったつもりだったのに、意外にも私の声は小さくて。
「コレ、返す。」
そう言って、苦虫を潰したような顔で、勇は私が差し出した合い鍵を受け取った。
「今までありがとう。」
そう言って、踵を返して一目散に靴を履いて、部屋を出た。
彼女がいた事、逆に吉と出たみたいだ。
二人ならきっと、あーだこーだと言い合って、結局別れられないなんてオチにもなりそうだったし。

「藍っ!」
ガチャッと音がして、そこにはやっぱり、勇の姿があった。
「なに?」
「その、俺、藍の事好きなんだよ。」
「はあ?」
予想外すぎた言葉に、思わず抜けた声が出た。
「だから、お互い本命で居て、その、好きな奴とは別に……みたいな。」
今にもデヘヘと、笑い声が聞こえそうな勇の顔。
つまり、浮気しながら、付き合おうって事?
どこまで勝手な男なんだか。
半年ちょっと付き合って気付けない私って……、バカ?

「無理。」
「なんでだよ?俺は、藍が本命でいて欲しいんだよ。」
「なんでって、あんたバカ?」
この台詞、なんかのアニメであったよな。
って今は、そんな事思ってる、場合じゃないか。
自分を制して、話を戻す。
「あの子、大切にして。私も、新しい恋するから。」
「俺が不満なの?!」
もう、救いようの無いと言うか……。
「こんなに好きなのに!」
そう叫ばれると、勇の右手が飛んできた。

パンッ!と音がして、熱い痺れが、私の頬を包む。
暫く、沈黙が流れた。
「あ、あの、俺。」
気まずそうに、勇が言葉を発する。
そんなつもりじゃなかった!でしょ?
いい加減、解ってくれないものか。
「もう、いいから。本当に、最後にしよう。」
「藍……。」
半分泣きそうな声で、勇が私の腕を掴む。
「ちょっと、やめてよ!」
必死にもがき、逃れようとすると、私の体が一瞬、宙に浮いた気がした。
そして、私の唇を何かが包む。

反射的に目を閉じて、少し苦い、煙草の味を感じた。


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