初恋はインパクトとともに ♯3/トレジャーハンティング-2
彼女の話をするときの彼…朝比奈くんはとても嬉しそうで楽しそうだった…
その笑顔はとても魅力的で…少し後悔した…
彼が自分に好意を持ってくれていることは知っていたから…
最近の彼は変わった…
おそらくは…いや確実に彼女の影響だろう…
そんなことを考えると少し嫌になる…
彼女が…そして、こんな自分自信が…
心地よい時間が過ぎていった…
短時間だが彼女のことを忘れて話に夢中になっている自分に気付き、少し嫌になった…
時刻はもうすぐ6時…
「そろそろ帰るか?」
「そうだね…明日も学校あるし」
「さっすがさくらちゃん、優等生はちがうねぇ〜」
カイがいたから、さくらちゃんとも緊張せずに喋れた。
(これはこれでオレにとっては貴重な時間だったのかも…)
僕らは割り勘で勘定を済ませると店を後にした…
店を出た僕は、ホント無意識に彼女を探していた…
そんな僕を…彼女は見ていた…
駅前広場…大時計の前に彼女はいた…
何か気まずかった…一時でも彼女と会うという当初の目的を忘れて楽しんでしまっていた自分がいたから…
「ごめん、俺はここで…また明日!」
「えっ?」「おい!」
「ちゃんとさくらちゃん送ってけよ〜」
彼が近づいてくる…どんな顔をして迎えればよいのだろうか…
友人と楽しそうに話す彼を見てしまった…その笑顔はやはり温かい…が、私に向けてくれる笑顔となんら変わらない…
(いや…むしろ…)
「はぁ…はぁ…ごめんごめん…探してたんだけどさ…」
笑って声をかけてはみたものの…
(自分でも分かる…ぎこちない笑い方をしているんだろうな)
彼女がずっと待っていてくれたんだなって見てとれたから…
その間…俺は彼女のことを忘れて過ごしてしまっていたから…
誰かに咎められる事なんてないだろう…誰かが悪いなんて言えないだろう…
だけど、それでも何か…一番大切にしなければならなかったものを忘れていた気がして…
自分が嫌になった。
彼の笑顔は私だけのものじゃない…
あたりまえの事だが、そのことに気づかされた今日はなんだか…
自分の物だけにしたがっていた自分がなんだか…
少し嫌になった。
そんなだったからか…その日の僕たちはぎこちなかった…
出会ったころ以上に…
距離がまた開いてしまったように…
(何か行ったり来たりだよな俺たちって…)
そんなことを考えると不謹慎だがちょっと笑えた…
「ん?何がおかしい?」
「いや…別に…」
「アカネは相変わらずワケが分からない奴だな…」
「そうか?」
「そうだ!急に笑ったり、独り言を言い出したり…そもそも…」
(あれ?けっこう俺のこと見てくれてる?)
そんなことを考えてるとまた笑ってしまった…
「またか…」
彼女は呆れ顔だが…何かこのやりとりが僕たちらしくって嬉しかった…
それからは何だか普通に話せた…
会うたびに呆れさせられたり怒ったり…だが、そんなやりとりも心地よい…
だからやはり…また会いたくなってしまう…
まったく不思議だ…
だけど、今の自分にとってはかけがえのない時間なんだ。
「っくしょ〜」
「くしゅん!」
それから一時間ほど僕らは話した…
なんだか彼女と話していると、頭にかかったモヤモヤが晴れてくるから不思議だ…
「では…」
「うん、また会おう。」
翌日、俺たちがそろって風邪をこじらせたのは言うまでもない…