操れるかも! 操られるかも!?-31
千佳は机に座る俺の前に立つと、両腕を机について俺の
顔を大きめの瞳を見開いて睨みつける。
「……これなら、いいんですか?」
俺は千佳の目に射抜かれて動けなくなってしまった。
千佳は口をきつく結んで俺の目を見つめたまま微動だに
しない。
俺と千佳はしばらくの間そのままの状態でいた。
俺は千佳に気おされると同時に千佳の怒りを訴えている
表情に美しさを感じ、千佳から目をそらせないままじっと
していた。すると千佳の瞳がじわじわと潤んできて、千佳
の方から視線を床へとそらす。
「……お、おい」
「……先輩が悪いんだ……」
「え?」
「ほんとは……先輩が中学卒業した時に、あきらめようと
思ったのに……」
「……」
「あの日、打たれて……あんな、あんな落ち込んだ姿見せ
るから……」
「……お前……」
「……追いかけて、来ちゃったんじゃない……」
千佳は大介じゃなくて俺を追ってこの高校に入学した?
しかもあのぶざまな、俺の五年間でたった一度の先発試
合を見て……
俺の中で嬉しいような恥ずかしいような感情が渦巻く。
「……それなのに、すぐに部活に来なくなるし、久しぶり
に来たと思ったら変な力使ってエッチなことするし……」
「……い、いや、その……」
「……高杉先輩にまで力使ってるし……」
千佳の俺をなじる声がだんだん鼻声になってくる。
「……今だって……」
「……今?」
「ずっと目と目が合ってたのに……もう操ろうともしてく
れないし……」
「……」
「……私、先輩にとって、ただの後輩で終わっちゃうんで
すか? それとも……」
顔を上げた千佳の頬に目に溜まっていた涙が流れ出す。
「……もう一度……チャンスを……くれますか……」
千佳はそう言って俺の目を再び見つめる。
……たぶんチャンスを与えられたのは俺の方……
俺は何かの力に操られているかのように千佳の目に釘づ
けになっていた。
「……千佳……」
「……」
俺の目は千佳の瞳に吸い込まれたまま、どんどん千佳の
顔を近くに捉えてくる。
「……!? ……ん……」
千佳の顔がこれ以上はないくらいに近づいた時、俺の唇
に柔らかく暖かい千佳の唇の感触が伝わった。
「……ん……んふ……」
唇を離すと、間近に見える千佳の目もとが桃色に染まっ
ていてとても色っぽい。
俺は千佳のうなじに優しく両手を回し、額を千佳のおで
こにくっつける。
「……千佳……」
「……はい……」
俺は小さな声で千佳に命令した。
「……脱いで……」
「……」
千佳は長い間押し黙って目を伏せていたが、
「……うん」
と、とても小さく、消え入りそうな声で答えた。
千佳は俺の腕から離れると、ゆっくり制服を脱ぎはじめ
た。千佳の腕からは袖が流れ落ち、千佳の脚元にはスカー
トが支えを失って落下する。
千佳の肩にかかった紐が下ろされ背中の金具も外された
千佳の小さめの膨らみを隠していた存在が千佳の体から役
割を解かれたのを確認した俺は、再び千佳と唇を重ねなが
ら強く身体を抱きしめた。
「……先輩の目、まだ光ってませんね……」
「……ああ……」
「なにかが弾けるような音も聴こえない……」
「……必要か?」
「……ううん、いらない……」
「……そうか、よかった」
「うん」
俺は千佳の体を優しく机に横たえ、自分の体にまとわり
つく邪魔な衣服を脱ぎ捨て、千佳と同じく腰の布だけを残
した姿になると、自ら机に上がり千佳の上に被さる。
俺の胸が千佳の胸と密着した状態で何度目かのキスをす
る。それは、その度に熱く激しいものになってきていた。
俺の腕が千佳の背中に回り少し撫でてしまうと、千佳は
重ねていた唇を離して息を吐いた。