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操れるかも! 操られるかも!?
【その他 官能小説】

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操れるかも! 操られるかも!?-35

「今日は練習はないんですか?」
「あったんだけど、ほとんど部員が来てなかったんでラン
ニングだけして帰ってきた」
「相変わらずって感じのようですね〜」
「ま、俺にはけっこう合ってるよ」
「そうですか〜? なんなら私が行って気合い入れ直して
きましょうか?」
「俺、一年坊だからそれは後々まずいだろ」
「あはは、可愛い彼女がいると憎まれちゃいますか?」
「そういう意味ではない」
「……そんなにあっさり否定しなくてもいいじゃない」
「別に可愛い彼女がいるのを否定したわけじゃないよ」
「……圭一さん、口が上手くなりましたね」
 千佳が顔を赤くする。千佳の俺の呼び方はいつの頃から
か『圭一さん』になっていた。
「本当。ごくごく一部の人にだけだけど」
 その声に振り向くと、美奈子が側に立っていた。
「なんだよ美奈子。なんか用か?」
「ここは喫茶店で、私は注文聞きにきたんですけどぉ」
「……こいつ俺の時はカウンターから、何にする〜とか聞
いてきたんだぜ」
「私もごくごく一部の人相手には喋り方が変わるのっ」
「大介に対してか? ありゃあ詐欺だろ」
「圭ちゃん、程々にしないと圭ちゃんの子供の頃の恥ずか
しい思い出の数々を千佳ちゃんに教えちゃうわよ」
「あっ、聞きたい」
 千佳が大きく身を乗り出す。
「ごめんなさい。僕が悪かったです」
 俺は素直に下手に出た。
「あのね、圭ちゃんったら小学校三年の時にね……」
「悪かったって言ってるだろうが!」

 ……………

「喫茶店、賑やかそうねぇ」
「お客さんで賑やかってわけじゃないようだがな」
「あら、あの二人だってお客さんでしょ」
「店長の義理の息子と将来は義理の娘になるかもしれん子
だ。お客さんとは言えないだろう?」
「じゃ、あの二人からお金を取らなくてもいい?」
「しっかり取っておけ。何かと物入りだからな」
「ふふっ、じゃあやっぱりお客さんよ」
「そうか?」
「そうよ」
「ならしょうがない。せめて私たちの店であまり騒がない
ように釘だけは刺しておくか」
「……」
「……どうした?」
「……本当によかったの? 圭一君を一人置いてうちに来
て……」
「気にするな。圭一も彼女がしょっちゅう来ているようだ
し寂しいことなんかないだろ。かえって喜んでいるんじゃ
ないか?」
「……でも……」
「……気にするな。家を出たからといって陽子を忘れるわ
けではない。ただお前との人生を歩む上で、この家にいる
のがベストだと判断したのだ」
「……」
「私は自分の意志でここに移ったのだ。お前に操られて決
めたわけじゃない」
「……私はそんな力持ってないわよ」
「こんな力、欲しいか?」
「……怖いから、いらない」
「人間には本来こんな力はいらんのだ。私や圭一にとって
も既に持っているというだけの力になっている。おそらく
これから生まれてくるこの子にとっても無用な代物となる
だろう」
「……また、封印するの?」
「ああ、十八歳までな。それまでに、力の誘惑に勝てるよ
うな子に育てんと」
「あなたはちょびっと使ったじゃない。エッチなことに」
「……さて、鍵はどうしようか」
「ふふっ……とりあえず『くちづけ』は無しよ」
「……わかっている。あれは失敗だった……」

 ……………

 店の外で何事か話していた由希子さんと親父が店の中に
入ってきた。俺は美奈子の昔話から話題を変えようと急い
で二人に話しかけた。千佳はそんな俺の様子を楽しそうに
見ている。

 夏の日差しは午後になっても強く、窓の外から店内を明
るく照らしていた。


 完


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