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操れるかも! 操られるかも!?
【その他 官能小説】

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操れるかも! 操られるかも!?-30

第10話 『千佳』


 千佳はしばらく俺を睨んでいたが、ふぅと一回大きく息
を吐くと掃除を再開した。
 ほうきが部室の床を掻きあげる音だけが聴こえてくる。
 俺はその時、一言の会話もない張り詰めた空気というも
のの存在を身をもって実感していた。

「よう圭一、来るのが遅すぎるぞ」
 大きな声に振り向くと、練習時用のユニフォームを着た
大介が部室に入ってきた。その後ろには美奈子がついてき
ている。
「あ、いや、俺は授業が始まる前の暇潰しに部室に来ただ
けだから」
 大介は女性陣を部室の外に出す。千佳は何も言わずに美
奈子は不服そうに部室を出ていくとドアを閉め、大介は制
服に着替えはじめる。

「なんだ、中原にでも会いに来たのか?」
 大介にしては珍しく小声で話しかけてきた。俺は大介が
千佳の名字を口にしたことに何気ない不快感を覚える。
「……ま、そんなとこだ」
「そうか。好きな子は大切にしないといけないぞ」
「……あんまりお前らしくない台詞だな」
「そうか? そうでもないと思うが」
「たった一夜の経験が人を変えるものなのかもな……」
「な、なんだよそれは!? いきなり変なこと言うな」
「わりぃわりぃ、別に意味はないんだ」
 大介は着替えが終わるとドアを開けて外に出た。
「おい、圭一。教室に行かないのか?」
「まだちょっと時間があるだろ。先に行っててくれ」
「さぼるんじゃないぞ」
「わかってるよ」
 俺とそれだけの会話を交わすと大介は部室のドアを閉め
て、外で待っていた美奈子と校舎の方へ歩いていった。
「あれ、圭ちゃんは?」
「もう少し部室にいるってさ」
「ふぅん、じゃ……」
 大介と美奈子の声はどんどん遠ざかり、すぐに聞こえな
くなった。

 俺は机の上に座り部室を見渡す。
「……去年よりはきれいになってるかな?」
 俺がそのまま机に寝転がると千佳のことが頭に浮かんで
きた。
 千佳は俺のことをどう思っているのだろう?
 俺にとって千佳はどういう存在なんだろう?
 大介を追ってこの高校に入学したって話は本当のことだ
ろうか?
 もし本当のことだと千佳の口から聞いたら俺はどんな顔
をするだろう?

 俺の頭が一つも答えを出せないまま問いばかりを増やし
ていると、部室のドアが開く音が聞こえてきた。
 俺が驚いて上半身を持ち上げると、千佳が足早に入って
きて壁に立てかけたままになっていたほうきを取る。

「よ、よう、用具片付けに来たのか?」
「……まだ掃除終わってないですから」
「あ、そう。でも、もうすぐ授業の時間だぜ」
「……斉木先輩だって、今寝てたじゃないですか」
「そうだけど……」
「……」
 会話はあっという間に途切れた。
「……」
「……」
「俺、邪魔かな?」
「どうして?」
「どうしてって、その……」
「……私が掃除してるのが悪いんですか?」
「い、いや、掃除するのが悪いなんてことは……」
 千佳が突然ほうきを床に放りなげた。
 部室内にカランという音が響いて、俺の体がビクッと小
さく跳ねた。


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