ダチ的信頼感-4
4.少女マンガから学ぶ
──
『ねぇ、約束してくれる?』
恋人・裕貴を熱くみつめて問いかける玲奈。
『何を?』
玲奈の手を取る裕貴。
『これからもずっとそばにいてね?私を離さないでね?』
『約束はできないな』
『え……?』
ショックで曇る玲奈の表情。
『だって約束するまでもないだろ?オレたちは離れられない運命なんだから』
『裕貴……!!』
きつく抱き合う二人。次第に近づいていく唇と唇が……。
「キモチわるっ!」
姉ちゃんの声がして、オレは現実に戻った。
「ジャマすんなよ、いいとこだったのに」
「何が『いいとこ』よ!勝手に私のマンガ読むのやめてよねっ!」
「いーじゃんかよっ、借りるくらい」
「別に貸すのはいーけど、弟がこってこての少女マンガ好きなんてキモいのよっ!没収!」
「あっ!オレの『ド・キ☆ド・キ★ラビリンス(3)』が!」
「あたしのよっ!ヒマなら外で遊びなさいっ!」
姉ちゃんに無理矢理外に追い出され、オレは玄関前で立ち尽くした。
外で遊べって小学生じゃねーんだぞ。
みんな部活だし…っつーか超寒っ!
かろうじて持たせられたコートをいそいそと着る。
初詣で着てたピーコートじゃなく、ひざ丈まである黒のダッフルコート。
浜崎家で毎年こじんまりと開催されている『福袋の中身品評会』にて、優秀賞を獲得した品だ。
オレがやっと手にした変化。
成績とか、身長とか……恋愛とかは変わらないのに。
初詣から抜け殻のようになって帰ってきて、考えれば考えるほどだめになった。
よく考えれば、森屋と目があったと思ったときは、いつも近くに宮田がいた。
もっとよく考えてみれば、文化祭のピンチを救ったのはオレじゃなくて宮田だった。
そして何よりも、宮田を見ていた森屋の目は、裕貴をみつめる玲奈の目そっくりだった。
なんで気づかなかったのかと言われても、結局は舞い上がってたんだろうな…。
「はぁ〜…」
ため息が白くなって消える。
……。
スターランでひまつぶしするか。
行くアテがないオレは、うつむくようにして歩き出した。