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ダチ的信頼感
【青春 恋愛小説】

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ダチ的信頼感-1

1.ロンリーエブリデイ

ときどき目が合うことに気づいてるのは、オレだけじゃなかったと思う。
一瞬で心臓がおかしくなって、すれ違った後に残る気まずさ。
森屋の長い髪はいつも、触れそうで触れない──。


「なんだよ、浜崎。今のおかしくね?」
清水のラリアット炸裂。
「…くっ!別に、なんでもねーよっ」
どうにか体をねじってはずす。
「森屋のヤツ、今更気づいたって遅いっつーの!な?」
すかさず小早川にチョークスリーパーをかけられる。
「だから、そんなんじゃねーつって…げほっ!ちょ…っギブギブ!」
小早川の腕を必死で叩いて、ゼーゼーと息をする。
「でも、絶対こっち見てたよな」
宮田が笑顔でオレを見る。
てめぇはニヤついてんじゃねーよっ!
「あの野島がカ・ノ・ジョの宮田が言ってんだからぁ」
「そーなんじゃねーのぉっ!?」
ますますおもしろがる清水と小早川。

文化祭が終わって一ヶ月。季節はすっかり冬になっていた。
かわいい子がちょっとこっちを見てたくらいでバカかと思うだろうけれど。
オレは三ヶ月前に森屋にフられて以来、ずっと無視されてきた。
それから考えたら今は奇跡に近い。
元々そんなに仲良くはなかったけど、完全無視はほんとツラかった。
オレが告ったりなんかして、森屋は迷惑だったのかもしれない。そう思っただけで……。
ああ、もう泣きそうだったな。
でも、主張の直前、教室で一人泣いている森屋を見て、そんな気持ちは忘れ去っていた。
「宮田が野島に告りたいって言ってたから!大丈夫だから!」
気づいたらそう叫んで、森屋の返事も聞かずに体育館に走っていた。
で、オレがいつもみたくさらっと宮田にやらせて、森屋は助かったという訳だ。
さすがに目が合うようになったからって、まだチャンスがあるとは思ってない。
ただ、オレのナイーブな心が、ほっとため息をついたってところだ。
が、おかげで宮田のヤツに彼女ができるなんておまけがついてしまった。
今じゃ校内イチ有名なカップルだし、けっこううまくいってるみたいだし。まさかだ。
野島にもパシリにされてるっぽいのは、やっぱりだよなぁ……。
そして最近、何故か小早川にも彼女ができた。
こう言っちゃなんだけど……ブス、なんだよな。何回見てみてもやっぱり……。
でも小早川は、
「オレ、今年の冬は風邪ひかないと思うよ。愛という名のホッカイロがあるから…」
と、こっちが風邪をひきそうなことを言っていた。
そういうのもいいと思うよ。何故か、全然うらやましくないけど……。
清水に関しては、あのエラソーな性格が、女ウケするんだろうな。
わかりやす〜い感じでモテてる。かわいくなきゃあっさりフるくせに。
「はぁ〜、フる立場もキツいっつーのに」
くっそー!言ってみてぇっ!!
……つまりは、オレだけが今の季節をゾンブンに味わっていた。
世間のハッピークリスマスムードからほど遠い、寒いだけのロンリーエブリデイ。
あーあ、彼女ほしいなぁ!!


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