ふつう-第三話-4
「ねえねえ、鷹丸くんのタトゥー、凄かったね!もう興奮しちゃったよー!」
「…そうねー」
「格好良かったよね!鷹丸くんらしいっていうか、本人に似合ってるデザインだったし!なんか他の男子がしょぼく見えちゃったよー!」
「…うーん」
「いいなぁ…。あんな彼氏だったら自慢出来るかもねっ」
「…そうねぇ」
「すくー?どうしたー?」
「いや、あの漢字とか絵って何か意味があるのかなーって思ってさ。そもそも何でこの歳で入れちゃったんだろう」
「んー…ファッションじゃなくて?」
「そうなのかなぁ…鷹丸くんのことだからそんな理由じゃないと思うんだけど…」
「…すく、鷹丸くんのこと気になってるの…?」
「えっ?そんなことないけど…」
「そういえばすくってば鷹丸くんにあだ名付けられてたし、バイト先も鷹丸くんのショップと近いじゃん」
「そうだけど、そんなんじゃないよ…」
「ほんとー?」
「…うん」
「…そっか!よかった!」
もうこれは明らかだろう。
大海は鷹丸くんに惚れてる。
そこそこ陽も落ちてきて、夜の帳が少し遠くまでまで来ていた。もう7時過ぎか…。
私はまた普通の世間話をして、それぞれ家路に着いた。
帰りがてらのチャリでも、頭はもやもやしている。
大海は鷹丸くんが好き。
そして恐らく大海以外にも、いるであろう。
あの外見、思考、そして今日のタトゥー…。
興味を持たせるには材料が揃いすぎている。
今までたくさん彼女が出来てたのも納得。
でも彼の場合、それら全ては外への飛び道具ではなく、寧ろ自身の内面に向かっているような、そんな気がする。
誰かの気を引かせる為では、決してないような…。
「あっ、パツ子」
もう家の近くまで来た辺りで。
思考を巡らせながら、逆にその思考を振り切るように必死こいて全力でチャリで疾走していたら、鷹丸くんがいた。
私服だった。
右手にはタバコ。
思わず急ブレーキ。