ふつう-5
「はい!えっと、鎌田大海です!よろしくです!…普通の質問なんだけど良いですか?」
「あー、良いっすよ」
「じゃあ…趣味とかあったら教えて下さいっ」
流石は大海。
安心するわっ。
「趣味っすか…。えーっと、音楽鑑賞、映画鑑賞、写真、洋服、廃墟見学、DJ、ドラム、哲学、裁縫……あと絵を描いたり。結構多趣味っす」
またまた意外な答えが羅列している。
「裁縫!?」
「絵!?」
「廃墟見学!?」
やはりざわついた。
結局皆気になるところは一緒なわけで、はたして多岐野くんが言う“普通”とは何なのか、早くも哲学的な疑問が皆の脳裏に過ぎった。
つかほんとにタメか!?
「凄い多趣味なんですねー…。じゃあ音楽鑑賞って出たんで、好きなジャンルとかってありますか?」
大海が続ける。
疑問点が多過ぎるが故の、最も安パイな質問なんだろう。
私が大海でも、そうするなー…。
「好きなジャンルすか…。オルタナ、グランジ、90年代中盤頃までのミクスチャー、シューゲイザー、プログレ、ポストロック、ハードコア、それ以外のUK・USロックも好きですし、オールドスクール、ミドル、ニュースクール、ギャングスタ、西海岸アングラ、トリップホップ、アブスト、ジャパニーズのアングラ、あとはWARPみたいなエレクトロとかテクノに、ダブ、ダブステップ、ドラムン、あとルーツレゲエに…とまぁ、そんな感じっすね」
「あ……ありがとうございます…」
流石の大海も、そしてクラス全員も、唖然としている。
これも予想を越えた解答。
多分皆は“もっと分かりやすいジャンル”が出て来ると思ったのだろう。
だけど違った。
正直、私に理解出来たのは……無い。
“そんな感じ”って、どんな感じよ!?
その後も何人かが続けて質問したのだが、そのどれもがこちらの予想を越えたもので、結果として余計に煙に巻かれたモヤモヤだけが残った。
質問に答えられれば答えれる程に謎は深まるばかり。