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Dear.
【悲恋 恋愛小説】

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Dear.First meeting-1

「よう賢悟!!相変わらず女運悪ぃなぁ!」
暖かな初夏の日差しが差し込む、大学のキャンパス内。
学生達のざわざわとした喧騒の中でも、一際大きな騒音が俺の名を呼んだ。
「…るせーよ。んなこたぁ、言われなくてもわかってんだよ」
不機嫌そうに返答すれば「そりゃ悪かったな!」と、騒音はより一層激しく騒いだ…もとい、笑った。

騒音…もとい、騒音の彼は、俺の中学からの友人。名を栗原晃司という。
中学のバスケ部で出会ってから意気投合し、高校は別々であったが仲は変わらず、大学でまた一緒になった。
中学まではバスケ一筋のスポ根少年だったというのに、高校に上がった途端にバスケを辞め、やたらとチャラチャラした男になってしまっていた。所謂高校デビューというヤツ。
俺だって出来ればデビューしたかったのだが、如何せん勇気が足らずこの様だ。まぁ、そんな事はどうでも良いのだが。
「賢ちゃん、あの紗弥加と付き合ってたんだって?かわいそー。あいつと付き合ってんの、あたしが知ってんのでも4人はいたよ」
騒音の後ろから美声が聞こえた。
晃司の背中からヒョコリと顔を出した彼女は、浅井小百合。一目瞭然ではあるが、晃司の恋人だ。
この2人の付き合いは結構長い。
高1の春、2人の高校の最寄り駅で出会い晃司が一目惚れ。そして即猛アタック。最初はウザイキショいと邪険にしていた小百合も晃司の熱意に負け、一ヵ月後には交際をスタート。今年で5年の付き合いになる。
今や何だか熟年夫婦のような2人は、俺の良き相談相手…いや、良いかどうかは判断しかねるが。
「4人かぁ、まだまだだな(?)。結局8股されてたよ。ちなみに俺6番目」
「マジで!かわいそー(笑)」
女運ホンット悪いねーと豪快に笑う姿は晃司そっくり。5年という付き合いで、仕草や表情や言動まで似てきたのだろうか。
しかし、5年も付き合えているなんて、俺からしてみれば未知の領域だ。一番長くても半年以上付き合った事がない。
いや、そもそも同じ学校というのがいけなかったのだろうか。
晃司と小百合は、駅こそ同じだが高校は別々。
晃司の通っていた男子校から100メートル程離れた所にある女子校が、小百合の母校である。
この微妙な距離が長続きの秘訣なんだろうか。
いやいや、でも今は同じ大学な訳で、それでも2人の仲の良さは変わらない訳で。
やっぱり相性とか性格の問題か…、と人知れず溜め息を吐けば、偶然それを目撃した晃司が、わざとらしく大きな溜め息を吐き出した。
「はぁ〜…。しょうがねぇなぁ。親友の為だ、いっちょ俺が一肌脱いでやっかぁ」
瞳をキラキラと輝かせた晃司が、俺の両肩を正面からポンと叩く。
…すまない小百合。俺は今、君の彼氏を心底気持ち悪いと思ってしまった。
「…一肌脱ぐって、何すんだよ」
まさかないとは思うが、上着をただ脱ぐだけとかいうのだったら、本気で殴り飛ばしてしまうかもしれない。
そんな事を思いながら返答を待つ俺の目の前に、晃司の浅黒い右手甲がスイと差し出された。
俺が訝しげに目を細めれば、その右手の小指がピンと天を指差す。
「女、紹介してやんよ」
一瞬、時が止まったかのように思えた。
何だ、別に何がどうとかいう訳ではないのに、何故か無性に腹が立つ。
こいつにそんな事を言われるとは思ってもみなかった。
中学時代は共に青春の汗を流し、「高校行ったら、彼女出来っかなぁ」なんて、初々しいような甘酸っぱいような会話を交わしていたこいつに、よもや「女、紹介してやんよ」等と言われるとは。


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