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Dear.
【悲恋 恋愛小説】

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Dear.-1

物語を話そう。
これは俺の物語であり、彼女の物語でもあり、誰にでも起こりうる物語である。


Dear.


彼女との出会いは、友人からの紹介だった。

高校時代から、俺の女運は最悪だった。
高校入学2ヶ月で、人生初の春到来。
記念すべき彼女1号は、同じクラスの今井真貴子。
身長151cmと多少小柄で、一重目蓋の大きな瞳と低めの鼻が何とも可愛らしかった。
俺の当時の身長が173cmだったから、その身長差は22cm。いつも上目遣いで俺を見上げて、ほんのりと頬を紅潮させながら話す姿は男心を擽られた。自分の事を「マキ」と呼ぶところもまた可愛いと思った。
そんな彼女の本性を知ったのは、交際から僅か2週間後の事。
「賢くん、ごめんね。マキ、他に好きな人ができちゃったの…。ホントにごめんなさい。だから、別れてくれない?」
右手は口元に添えられ、いつもの上目と頬ぞめに加え、潤んだ瞳で小首を傾げながらそう告げられた俺は、初め言葉の意味が理解出来ないのと、以前もこんな光景を見たことがあるような、というデジャヴ感が交錯してしまってか、ポカンと口を開けて彼女を見つめた。
「え…、…え?」
彼女を見つながら、ゆっくりゆっくり、今彼女の口から可愛らしく放たれた言葉を咀嚼する。

…好きな人ができたから…、別れて?

咀嚼した言葉が頭の中で反芻し、思わず口元が引きつった。
2週間。たったの14日程の時間だけで、彼女の気持ちは冷めてしまったと言うのか。
脳裏には、2週間前の、俺に告白をしてきた時の彼女の姿が蘇る。そして、納得した。
ついさっき感じたデジャヴ感。彼女は告白の時と何ら変わらない仕草で、今別れ話を切り出している。
そうか、だからデジャヴったのか、なんて考えながら、少しずつ、でも急速に俺の気持ちも冷めているのを感じた。
その翌日に、クラスの女子から今井真貴子の別れの真相を聞いた。
何でも、彼女は「自分の好きな男子」ではなく「誰かの好きな男子」を彼氏にする事が優越らしく、恋愛感情などなくても、彼氏になった相手を未練がましく見つめる女子の悔しそうな視線が、堪らなく気持ちいいのだそうだ。
この時初めて、女って怖いな、と心の中で恐怖したのを覚えている。
ちなみにその真貴子は、後日クラスの女子から「仕返し」なるものを受け、大層な屈辱を味わったらしい。

それから数ヶ月経ち、高1の冬。
2人目は部活の先輩で、1つ年上の小林絵美。
小学校の頃に、あの不朽の名作と名高い某名作バスケ漫画に刺激され、中学からバスケ部に入部し、高校でもバスケ部に所属。
「バスケ部」というのは一種のブランド性を持っていて、バスケ部に所属しているというだけで、女子からの注目度が若干上がったりもする。他にも「サッカー部」や「野球部」といったライバルがいるのだが。
…しかし、そのブランド「バスケ部」に属していながらも、俺の評価は至って普通。というか、中の下程。
万年補欠という備考があってか否か、他のバスケ部属性の奴らが注目される中、俺の存在は居て居ないも同然のような感じだった。
そんな折、女バス男バス合同の冬合宿の最中、「付き合わない?」と声を掛けられ、真貴子の事で女子が恐怖対象だった俺は、無表情で「時間を下さい」と、彼女からの突然の告白を返答待ちにしてしまった。

小林絵美は、女バス3年が引退後、女子バスケ部の部長に就任。さばさばとした責任感の強い人で、中性的な顔立ちから男女共に人気があった。
そんな人が何故に俺?という疑問が頭に残る。どうしても何かを企んでいるとしか思えなかった。
この心のもやもやが消えない限り、返答する事は困難。
迷った挙句、合宿終わりに彼女を呼び出し、何故俺なのかというストレートな疑問をぶつけてみた。
彼女の答えは簡単なものだった。


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