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Dear.
【悲恋 恋愛小説】

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Dear.First meeting-3

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大学から徒歩5分の所にある某ハンバーガーチェーン店。
がやつく店内に入れば、「いらっしゃいませ」と見事な笑顔を振りまく女性店員が出迎えてくれた。
そんな店員の前をするりと素通りし、小百合はキョロキョロと店内を見渡す。
「えー…と、どこかな…っと!いたっ!志穂!」
おまたせーとブンブン手を振る先に目をやれば、視界に入った1人の女性。
この人が、『西山志穂』。
小百合が声を掛ければ、律儀にも席を立って、こちらに綺麗な一礼をくれた。
栗色に染められたショートボブ。重めの前髪は丁度目の上で切り揃えられ、サイドの毛先にはゆるめのウェーブがかかっている。
そのサイドは耳に掛けられており、左右対称に付けられている耳たぶのピアスが光って見えた。
「ごめんね、待ったでしょ?待ったよね?」
「ううん、大丈夫だよ。本読んでたから」
小百合が顔の前で合掌すれば、彼女も両手を肩くらいまで上げて、大丈夫と振ってみせる。
右手の小指にも光るもの。ピンキーリングか何かだろうか。
左手には赤の革ベルトのレトロな腕時計。彼女の腕には若干大きいのだろう、動く度に腕時計もまた上へ下へと小さく上下した。
「それじゃ、改めて紹介するけど、あたしの友達の西山志穂。今日は授業なかったから居なかったけど、同じ大学だよ」
少し垂れ目の二重瞼が俺を見つめる。
「どうも」と彼女が控えめにお辞儀をすれば、耳に掛けた髪の毛が一束パサリと頬に落下した。
「で、こっちがあれ、晃司の友達で、木ノ下賢悟っての。この前話したよね?」
何だか、俺の扱いが極めてぞんざいな気もするが、今はそんな事はどうでもいい。
彼女に倣って俺も「どうも」と軽い会釈。
会釈をしながら、彼女の全体像を盗み見た。
黒地のTシャツに緑基調の膝上チュニック。7分丈のレギンスは裾部分がレース仕立てで、ハイカットのスニーカーは、奥州の覇者・伊達政宗を彷彿とさせるあの形のブランド。
盗み見を完了させて再度顔を上げれば、彼女とバッチリ目と目が合う。
やや戸惑ったような表情を見せた後、彼女は柔らかくにこりと笑った。
それを直視した俺の心臓は、思わず大きく跳ね上がった。
「まっ、立ち話もアレだし座ろっか!ねっ!」


彼女とのファーストコンタクトから30分が経過した。
話の中心は勿論小百合。
初対面で何を話せば良いのかわからない事も要因の一つだが、何だか気恥ずかしいというのも要因の一つである。
ペラペラと自分の話したい事をひたすら喋る小百合を半ば呆れるような瞳で見ながら、時折視線を彼女に移す。
彼女もまた小百合を複雑そうな瞳で見つめては、たまに相槌がてらふふっと笑う。
そんな彼女を見て可笑しくなりフッと笑えば、それに気付いた彼女が、俺を見て顔を赤く染めた。
「…ふぅん?」
隣で、小百合の含みのある声が聞こえた。
聞こえないフリをしてジュースを口に含めば、小百合の携帯が独特の機械音を出しながら、テーブルの上で小刻みに震えた。


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