「午後の人妻 童貞嫐りE」-6
彼の万引き騒動に心を奪われて失念していたが、
これは彼とのきっかけをつくる千載一遇のチャンスでもあったのだ。
これを利用しない手はない。
由子はその思いに至っていた。
「この2冊の雑誌を万引きしたんでしょう?
正直に白状してしまいなさいよ」
その2冊をさらに突きつけながら聞いた。
しかし、
少年は頑ななまでに口を閉ざして応じようとしない。
羞恥を感じてなのか、
屈辱を感じてなのか、
肩先がさっき以上に震えている。
「どんなに強情を張ってもいいわよ。
でも、それも警察に行くまでよね」
「け、警察?……
警察に行くんですか?」
少年が顔を上げて、初めて口を切った。
救いを求めるような表情に、美少年ぶりが際立っている。
「万引きは犯罪なんだから、警察に行くのは当然のことでしょう?」
「け、警察へ行くのは困ります」
「そりゃあ困るわよね。
警察に行ったら、
親御さんはよびつけられるし、
学校には通報されるし……
そのうえ万引きしたものが、
こんないかがわしい雑誌だったことも、
みんなにバレてしまうんだものね。
そりゃあ困るわよね」
由子は美少年を手玉に取る小気味よさを感じていた。
彼はしばらく逡巡(しゅんじゅん)してから、固い表情で意を決したように口を切った。
「あの……
お、おばさんの言うことを何でも聞きます。
だから警察に行くのだけは許してください。
それだけはかんべんしてくれませんか?」
「おばさんってよび方は余計だわよ……
さて、どうしようかしらね」
由子はわざと焦らすように、もったいをつけてからつづけた。
「私が命じることを、ホントに何でもするのね?」
思惑とおりの展開に、由子はほくそ笑みそうになるのをこらえながら言った。
少年がすがるような目で、
見つめ返してうなづいた。
その真剣な表情には、
神々しいまでの美しさが漂っている。
「そうね。
どうしようかしらね……」
由子は思案顔をしながら、もう一度考えるそぶりをした。
彼女のなかでは、この美少年をどう料理してやるのか、その案はほぼできあがっていた。
だが、
彼を焦らせていたぶるために、
わざとたっぷりの間を取った。
美少年は瞬(まばた)きもしないで凝視しながら、
由子の言葉を待っていた。
彼にすれば、
ここで警察に突き出されるかどうかは、
一生の問題といってもオーバーではなかった。