エース-9
「二人とも緊張しているようね?
お話するより、見て頂く方が速いかしら。」
ひろみ達が通された建物は、病院のようだった。
「この建物は、肥大症の治療院になっているの。
ここでは、一般の病院では行っていない治療もできるのよ。
肥大症は発情をともなう病気でしょう。一般の考え方では、刺激を与えることが治療だからと発情をも放置している。
ここでは違うのよ。発情をコントロールし、人の尊厳と治癒を両立する研究をしているの。外出している間は過敏に反応することを抑えて、自分の選んだ時間に集中して治療することが出来るのよ。」
驚くべきことだった。肥大症を患うことで、自らが一度は失い、大きな犠牲を払って取り戻した尊厳を守るために、莫大な研究費用を掛けているのだ。
「お蝶夫人。私達、いえ肥大症の患者のために、
どうしてここまでして下さるのですか?」
「硬く考えなくてもよいのよ。
そうね、肥大症には他にも治療があるの。
そちらも見ていただきたいわ。」
長い廊下の先の、あるドアの前で立ち止まった。
「麗華です。入ってもよろしいかしら?」
許可を得て部屋へ入ると、そこには恐るべき光景が広がっていた。
分娩代のようなものに一人の娘が縛り付けられていた。そして、その娘の股間にある巨大なクリ○リスには、何百本という針が突き立てられていた。
「いやぁ!」
優子が小さな悲鳴を上げた。
その間も、白衣を着た女性が次々とクリ○リスに針を突きたてていく。
「ぐっ! ぐわあ!」
縛られた娘は呻き、体からは玉のように汗が吹き出ていた。
枕元に、一人の娘が座っていた。
その娘は硬く瞳を瞑り、縛られた娘の手を額の前で合掌するように握っていた。
縛られた娘の悲鳴が漏れる度に、苦しそうに体を震わせていた。
「治療を受けているのは絵里さん。手を握っているのは絵里さんの彼女よ。
絵里さんは彼女のために、肥大したクリ○リスをそのままにすることを望んだの。
クリ○リスは刺激を加えれば何れは元の大きさに戻ってしまう。彼女とのセックスを楽しみながら肥大した状態を維持するために、絵里さんは自ら辛い治療を選択したのよ。」
「そんな!」
優子が声を上げる。
優子の瞳を見据えて、麗華が声を掛ける。
「ひろみが優子さんを本気で守ろうとしていたけど、優子さんに応える覚悟があるのかしら?」
麗華の言葉が優子の心に突き刺さった。優子はひろみに甘えてばかりで、何一つひろみの気持ちに答えていないことに気がついた。優子はひろみの告白を断り続けているにもかかわらず、優子の一方的な肉欲でひろみに肉体関係を要求し、自らの快楽のみを求めて、ひろみの心を何一つ受け入れようとしなかったのだ。優子は病気に溺れて、大切なひろみに対する思いやりを欠いたことに恥じ入った。