エリザベス・悲劇の人形たちT-5
「ふーん、名前はキディかァ。一番の泣き虫で、甘えっコさんなのネェ」
同じようなタイプの子供人形でも、色んな性格があるようだ。
「ウィアーンッ! ミャーミャーッ!」
「キディ、キディ、ナカナイデ、キディ」
しっかりとキディを抱きしめ、頬ずりのスキンシップを施す。
「ウィアンッ!! ウィアンッ!! ウィアンッ!!」
どうも泣き止まないようだ。
しかも、激しく抵抗している。
「自分だけ、無視されたって思ってるのネェ。
キディ、大丈夫よ。
ママは無視していないから」
マルセルも、キディをなだめるけど…
「ウィアーンッ!」
本人はなかなか泣き止まないようだ。
「ゴメンナサイ! ゴメンナサイ! キヅカナクテ!」
「ウィアーンッ!」
「ゴメンナサイ! ゴメンナサイ!」
エリザベスも一緒に泣く。
―――――――――
しばらくして…
食事の後片付けを済ませたマルセルが戻って来た。
人形部屋は静かだ。
子供人形たちは中で楽しくくつろいでいる。
では、あのキディは?
「エリザベス、あの泣き虫っコさんは?」
「ココ」
廊下で1人、ブラブラしていたエリザベス…
自分の衣類の胸元をはだけた。
覗いてみると、キディはエリザベスの乳房をチュチュチュチュ吸っている。
勿論、母乳なんて出るワケがない。
なのに吸うとは。
なるほど…
性格的にキディが唯一、人間で言う乳児に近いのも納得出来る。
「キディ? キディ?」
話しかけるマルセル。
「ミャー?」
穏やかな表情で、キディは顔を上げる。
子供人形たちはこの後、風呂に入った。
3つの子供人形用携帯風呂桶にタップリと湯が注がれ、子供人形たちはそれぞれの湯に浸かるのだ。