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SFな彼女
【SF 官能小説】

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SFな彼女 -Sullen Face編--3

2. いじめたい衝動

救急箱といっても、普段は使わないものだ。
引っ越して来た際にお袋から手渡された救急箱だったが、俺自身怪我も風邪もしないため、一度も開けたことはない。
どこにあるのか探すのに手間取ったが、ようやく部屋の片隅に埃だらけの救急箱を見つけた。
「あったぞ」
俺は軽く埃を払いながら、テーブルの上に救急箱を置いた。
「消毒薬とか入ってりゃいいんだけどなー」
言いながら救急箱を開き――俺はソッコーでふたを閉めた。
傍らの榊が顔を赤くして俯いてるっつーことは、こいつもそれを見たらしい。
「い、今のはセクハラに入らねえよな?」
何という、自分でもアホなことを言いながら俺は榊に言う。
榊は相変わらず顔を俯かせたまま言った。
「な、何も見てないわよ私は!」
その言葉は逆に「自分は見た」と言っているもんだと思いますが……。
まあ、でも見てないってんなら見てないってことにしておく。
考えてみれば、健康な青年の部屋には普通にあるものだしな。
俺は再び救急箱を開き、一番上に置かれたコンドームをさっとジーンズのポケットにしまう。
くそー、お袋かそれとも親父の仕業か?
俺は軽く舌打し、ようやく救急箱の中から消毒薬とガーゼ、テープを取り出した。
未だ顔の赤い榊の額に消毒をしていると、ユズリハが何とはなしに口を開く。
「マサキさまは、本当にカエデさまの恋人ではないのですか?」
「「なッ」」
俺と榊が同時に声を上げる。
「何言ってんだ、いきなり!」
「どこをどう見たらそうなのよ!」
それが予想外の反応なのか、ユズリハは至極意外そうに言った。
「ふええ、そうなのですかぁ」
それからユズリハはくすくすと笑いながら、俺が榊に手当てしてやってる様を見つめていた。
その含むところが何なのか、俺には理解しかねる。
やがて手当ても終わり、榊がぶっきらぼうに俺に礼を言った。
「……どうも」
「どーいたしまして」
確かに怪我をさせたのは俺だが、手当てもしてやったんだ。
榊の態度が気に食わず、俺もぶっきらぼうに言う。
「お前さァ」
「何よ」
「その可愛げのないとこ、もーちょっとどうにかすれば? そんなんだからモテねえんだよ」
「なッ、あんた何かに言われたくないわよ!」
俺の言葉に榊が噛みついた。
――ああ、やっちまった。
ここまで言う筈じゃなかったんだのに。
しかし、俺の口も止まらない。
「俺なんかって何だよ! 俺がてめえに何かしたのかよ!」
「常に女の子と別れ話してるじゃない! しかも、いっつもいっつもゼミの前に! 耳障りなのよ!」
勢いで立ち上がった榊が、足元に落ちていたリモコンを踏んだ。
ピ、とテレビの電源がつく。

――ハイ、お約束。
『ん……あッ、あんッ……おっきいのぉ……!』
テレビから流れる、淫らな喘ぎ声。
一瞬にして黙り込む榊。
その顔を真っ赤にして、榊は足元のリモコンを拾い、再び電源を切った。
「な、ななな何よ、これ! 弟の友達が来てたってのにこんなの見てたわけ!?」
「こ……これは……」
俺はちらりとユズリハを見やった。
ユズリハはというと、笑顔のままで首を横に振り――肩を竦める。
「こ、これは一種の性教い……あでッ!」
別にテレビを見ていたわけじゃない、とでも言っておけばいいのに……俺のバカ!
榊に殴られながら、そんなことを考える。


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