投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

ジャム・ジャム・ジャム
【SF その他小説】

ジャム・ジャム・ジャムの最初へ ジャム・ジャム・ジャム 29 ジャム・ジャム・ジャム 31 ジャム・ジャム・ジャムの最後へ

レッド・レッド・レッド-8

かくて、ローゼンロット海賊団を捕えるべく、三人は惑星ディオニシスへと向かっていた。
惑星ディオニシスは、酒の星。安くて美味いぶどう酒が名産である。
ディオニシスに存在する無数の酒場は、常に酒好きのトレジャーハンターや海賊、観光客で溢れている。
エイジとダナもそれぞれお気に入りの酒場があり、景気の良い時にはそこで飲んでいた。
「ディオニシスか、久しぶりだな」
少し浮かれたような様子でエイジは言った。
婦警の話によると、『若返りの水』はディオニシスの遺跡にあるとのことだ。
多くのトレジャーがそうであるように、エイジも酒が好きだった。
当然、情報収集を行うのは酒場である。ディオニシスの酒は、ギャラクティカのものとは違って一切混ぜものはしていない。
安くて美味い酒が飲めるとなると、喜ばずにはいられなかった。

「ジャムは行ったことあるの?」
「ディオニシス? 初めてなんだ! お酒飲んだこともないから、楽しみ」
「ま、ガキだからな」
エイジが鼻で笑うと、ジャムはむっとしたように言った。
「ガキだなんて、失礼しちゃう。あたしはこれでも十九よ」
「じゅうきゅうッ!?」
「あらァ、もっと若いかと思ってたわァ」
見た目では十七かそこらに見えるジャム。そしてその声や言動を聞いていると、実際の年齢よりも随分幼く感じられた。
「エイジと、十六くらいじゃないかって言ってたのよ」
「だってまるでガキじゃねえか。それにチュールの公式データで十六って……」
「それはプロデューサーが勝手に設定したの。大体、ガキとは何よガキとは」
「そうやってムキになって言い返すところがガキなんだよ」
エイジが言うと、ジャムはむっとして口を噤んだ。
口喧嘩でエイジに負けたのはこれが初めてだ。悔しげに唸るジャムを見て、エイジが意地悪く笑った。
「悔しかったら、あの婦警さん並みの色気を出してみるんだな」
笑いながら、エイジはコックピットを去る。
残されたジャムは悔しそうに拳を震わせて、エイジの背を睨み付けていた。

(……あいつ、十九なのか)
プラチナ参号に設えられた簡易ベッドルームから、エイジはぼんやりと外を眺めていた。
様々な宇宙船の飛び交う空を見つめ、心の中で呟きを漏らす。
(そっか、それじゃ別にロリコンってわけでも――)
思いかけて、エイジはがしがしと頭を掻き毟る。
(って! なんで俺がそんなことを思わなけりゃならねえんだ!?)
違うだろ!? 俺はグラマーなお姉さんが好みだった筈だろ!?
いや、そりゃあいつもイイ身体はしてたけど。
そんなことを思いながらエイジは舌打ちひとつ、ごろりとベッドに横になった。
低い天井を見つめながら、エイジはゆっくりと瞬きをする。
そして彼は小さく呟きを漏らした。
「何なんだろう、な……」


ジャム・ジャム・ジャムの最初へ ジャム・ジャム・ジャム 29 ジャム・ジャム・ジャム 31 ジャム・ジャム・ジャムの最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前