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ジャム・ジャム・ジャム
【SF その他小説】

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レッド・レッド・レッド-9

第3章 絶対攻略出来ねえ迷路なんだ

無法者共の喧騒と、酒場に響く陽気なジャズ。
酒場のお抱えシンガーはハスキーな声でもって、軽快なピアノとサックスに合わせて歌う。
惑星ディオニシス最大の都バッカスの、これまた最大の酒場ロージィ・マウンテン。
大衆食堂も兼ねた酒場には、ギャラクティカ並みに様々な人種が溢れていた。
トカゲ頭の亜人もいれば、赤色人、青色人、緑色人の姿も見える。
彼らは皆麦酒やらぶどう酒やらのジョッキを呷り、歌姫の歌に身体を揺らしていた。
「さァて」
ダナはカウンター近くの丸テーブルに陣取ると、メニューを見てぺろりと舌なめずりをした。
「やっぱりぶどう酒かしらね。もうすぐ夕飯時だし、豪勢にお肉なんか食べちゃう?」
「いいねえ」
エイジも嬉しそうに言って椅子に腰掛けようとすると、ダナが彼を軽く睨み付けた。
疑問符を浮かべるエイジに、ジャムは意地悪い笑みを浮かべて言う。
「エイジはまず情報収集ね」
「そォ言うこと。あんたにはちゃんと麦酒頼んでおくから」
二人の言葉にちっと舌打ちし、肩をいからせてエイジはカウンターへ向かって行った。

「お姉さん、情報屋?」
エイジが声をかけたのは、カウンターにひとり座る、赤い髪をした女だった。
鮮やかな赤い髪をしているが、その肌は赤色人のような褐色ではなく、白い。
赤色人ではなさそうだ。
「情報屋には違いないがね」
些かハスキーな声をした女が、言ってエイジを見た。
年の頃ならエイジより五つほど上だろうか。深い緋色をした切れ長の瞳が印象的な美人だ。
耳にかかる赤いボブをうざったそうにかき上げて、女は笑った。
「こんなナリしてるのに、よく情報屋って分かったね」
瞳を細め、女はぶどう酒のグラスを呷る。
そしてエイジの方を向くと、女は赤いシャツから扇情的な胸の谷間を覗かせた。
思わず視線が胸に行き――それを誤魔化すようにグラスを煽ってエイジは言った。
「情報屋かって訊くのは挨拶みたいなもんだ。無骨な野郎の情報屋から情報を買うより、美人から話を聞く方が楽しいんでな」
調子よく自分のグラスをかちん、と女のグラスに合わせるエイジ。
「だからお姉さんが情報屋なんてラッキーだな」
「お前さんはトレジャーハンターかい?」
女が聞くと、エイジはこくりと頷いた。
「『若返りの水』ってのを探してる。ディオニシスの遺跡にあるって聞いたんだ」
エイジの言葉に女の眉がぴくりと動いた。
彼女は思案するように中身のなくなったグラスを揺らしながら、酒場の店主に声をかけた。
「旦那、もう一杯おくれよ」
エイジがすかさず懐から1000G札を取り出し、女の手元に置く。
「その様子だと、知ってるみたいだな」
「知りたいかい?」
もったいぶる女に、こくこくと頷くエイジ。
「此処から10キロ程南西に進むと、大きなぶどう園が見える。遺跡はそのぶどう園の下さ。怪しげな地下への入り口があるから、すぐ分かるよ。ディオニシスの遺跡って言ったら、まずその地下遺跡だね」
自分にはそれしか分からないと女は言って、再びグラスを呷った。
エイジは軽く礼を言い、500Gコインを札の上に置いた。
「それだけで十分さ」
そう言って軽く片手を上げてカウンターから去るエイジ。
女は赤い瞳を細めて彼の背を見つめ、その口元をにやりと歪ませた。


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