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ジャム・ジャム・ジャム
【SF その他小説】

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レッド・レッド・レッド-14

「どォしたの?」
一番後ろを歩くダナが声を上げた。
エイジは電灯でジャムを照らし、その顔を覗き込んだ。
「どうした? 何かいたのか?」
ジャムは彼の問いに、少し考えるような仕草をしてから、躊躇いがちに口を開いた。
「……何だか見られてる感じがする」
彼女の言葉に、三人は互いに顔を見合わせてから辺りを見回した。
薄暗い遺跡の中である。自分の目の届く範囲に怪しい人影などは見つからない。
しかしこの暗さと、彼らから死角になる曲がり角の多さ――後ろを何者かがつけているということは十二分に考えられる。
ダナが後ろを振り向きながら神妙な表情を浮かべた。
「そう言われれば」
「ローゼンロットの奴かもしれないな」
「様子を見ましょうか」
「ローゼンロット?」
エイジとダナとの会話に、ルーが首を傾げる。
「ま、色々事情があるってこった」
エイジは言って、再び先頭に立って歩き始めた。


「ちょっと旦那ァ!」
遺跡の中に、ルーの叫ぶような声が響く。
彼が涙を浮かべる目の上には刃物が掠めたような跡があった。
そしてその瞼の上、額には大きなこぶができている。
「旦那の踏んだ罠が全部俺に来るんだよぉ、勘弁してよ!」
「うっかりだよ、うっかり! 俺だって被害にゃ遭ってんだぞ!」
そう言うエイジの一張羅のジャケットは、袖の辺りがすっぱりと裂けていた。
遺跡に入って初っ端に踏んだスイッチで起動した罠にやられたものだ。
その下の腕に微かに血が滲んでいたが、深い傷ではないらしい。
それよりもお気に入りのジャケットが裂けてしまった方が、彼にとっては大事のようだった。
「オーダーメイドでいくらすると思ってんだよ、これ! 15万Gだぜ、15万!」
真紅と朱色のレザージャケットの背には、彼らの船であるプラチナ参号と『PLATINUM』の文字の刺繍がされていた。
インク印刷ならもっと安くすむものを、あえて刺繍にするところに、エイジの妙なこだわりを感じる。
「そんな大事な服なら、着てこなければいいじゃない」
「うるせえな、防護性・耐久性があるって売りのレザーなんだよ。これまで破けたことねーんだぞ!」
ジャムのもっともな言葉にエイジが答える。
しかし、そんな防護性の高いジャケットでも此処まで綺麗に裂けてしまうとは――斜め上から飛来した罠が直撃していたらと思うとぞっとする。
「女々しいわよ、エイジ。さァ、早く歩いて歩いて」
ダナが言って、一行を促した。
エイジはじとっとダナを睨み付ける。
(お前にだけは言われたくねえよ……)
「何? どォしたの?」
「いや」
エイジは短く答え、慌てて首を横に振った。


そうして幾つもの角を曲がり、罠を発動させながら、四人はジャムの言葉を頼りに奥へ奥へと進んでいた。
しかし、もう二時間も迷路のような入り組んだ道を歩いている。
先程よりは幾らか道幅は広くなり天井も高くなったが、それ以外は入口から何も変わっていない。やはり灯りもない。
一行にルーの相棒の姿は見えないし、『若返りの水』に辿り着くこともなければ、ローゼンロット海賊団も姿を現さない。
「本当にこの道で合ってんのか? さっきと同じような道をグルグルしてる気がするんだよな」
エイジが歩きながら後ろのジャムへと声をかける。
彼女は少しだけむっとした様子で言った。
「あたしは勘を頼りに進んでるだけよ! 絶対に正しい道ってわけじゃないんだからね!」
「なッ」
ジャムの言葉にエイジは顔を引き攣らせた。


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