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ジャム・ジャム・ジャム
【SF その他小説】

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レッド・レッド・レッド-13

「……これが、遺跡?」
「ま、親切な遺跡だこと」
エイジの運転の「おかげ」で、四人は思っていたよりも早くディオニシスの地下遺跡に着いた。
しかし、入口を前にルー以外の三人は思わず困惑する。

『ようこそ、ディオニシス地下遺跡へ! 入口はこちら↓』

そんな看板が、地下へと続く小さな階段の前に立っていた。
しかも、看板の周りは辺り一面ぶどう畑。
鮮やかな緑の中に、紛れるようにして遺跡の入口があるのである。
「さ、どうぞ入って」
ルーが軽い口調で遺跡へと三人を促した。
エイジ達は顔を見合わせ、胡乱げな表情を浮かべる。
「此処が本当に遺跡なのか?」
「そうだよ。看板にだって書いてあるじゃないか」
何が疑問なのだろうと言わんばかりに、ルーは肩を竦めながら言う。
(書いてあるからこそ怪しいんだけどな……)
エイジが看板を見やった。
ベニヤ板に雑な文字でのペイント。観光客の落書きではないかと疑ってしまう。
しかし、ルーの相棒であるガルーがこの遺跡の中にいるのには間違いない。
そもそも彼らがこの遺跡にやってきたのは、お宝が目当てというよりは、ローゼンロット海賊団を捕えるためである。
この色々な意味で怪しげな遺跡に『若返りの水』があるという噂があるのなら、彼女達はきっとやってくる筈だ。
「ま、行ってみるか」
エイジは言って、階段に足を踏み入れた。
「そォね、早くルーの相棒を助け出さなくちゃだし」
「そうだね……」
入っていく二人に続き、ジャムもその階段を下る。
しかし、彼女はどこか気乗りしない様子だった。

四人が階段を下りると、少しばかり開けた場所に出た。
灯りはほとんどなく、エイジとルーが携帯の電灯で辺りを照らす。
奥へと続く道へ向かう三人を、ジャムが神妙な面持ちで止めた。
「ちょっと待って」
彼女は眉間に皺を寄せ、遺跡の壁に手を触れた。
「……なんか、この遺跡、おかしな気配がする」
「おかしな気配?」
エイジとダナ、ルーは顔を見合わせて首を傾げる。
ジャムは自分でも良く分からないといった様子で、首を横に振った。
「上手く言えないけど……何だか、遊園地(テーマパーク)に来たような、そんな感じ」
「ワクワクするってことだろ、早く行こうぜ」
不安げな彼女にエイジは軽く言うと、暗い闇の待つ遺跡へと足を進めた。
ダナも彼のすぐ後に続き、ジャムに向かってウインクしてみせる。
「さ、ジャムも行きましょ! 怖いならアタシがしんがりをつとめてあげるから!」
そんなダナに、ジャムは頷き、駆け足で三人の後を追った。
(……気のせい?)
遺跡への違和感と妙な気配を、残したまま。


ふたつの携帯用電灯が辺りをぼんやりと照らす。
赤い土の壁はひんやりと冷たく、天井からは時折蝙蝠の鳴き声が聞こえた。
こういった遺跡に特有の不気味な雰囲気は、トレジャーハンター達にとっては何よりも心を躍らせるもの――である筈なのだが。
「次の角……右」
ジャムが先頭を歩くエイジに言った。
彼は分かったという合図として電灯を頭の上で振ってみせる。
「………」
しかし、彼女の声が少しばかり震えていたのに気付き、エイジは歩みを止めた。


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