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ジャム・ジャム・ジャム
【SF その他小説】

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レッド・レッド・レッド-12

第4章 おかしな気配がする

「うわあ、一面のぶどう畑!」
風に靡く髪を押さえながら、ジャムが思わず感嘆する。
青空の下、緑のぶどう畑はどこまでも広がっていた。
ディオニシスの都バッカスより南西に10キロ、人で溢れる都とは正反対に静かな農園が広がる街――リベル。
エイジ、ダナ、ジャムとルーは、遺跡へと向かうべく、ルーの所有するクラシックなバギーを走らせていた。
「ディオニシスはバッカス以外に行ったことがなかったンだけど、こンな畑ばかりなのねェ」
「この星は大きく酒場街のバッカスと農園が広がるリベルにくっきりと分かれてるんだ。このリベルの領主が変わっててさ――」
言いかけたルーだったが、彼はふとバギーの運転席をちらりと見やった。
「……旦那、いやに無口じゃないか?」
そして声を潜めてダナとジャムに向かって首を傾げた。
二人は肩を竦めるだけだったが、エイジが不機嫌そうな声で言う。
「何で俺が運転手なんだよ」
「何よォ、いいじゃない」
「人一倍働くんでしょ?」
ジャムが意地悪げに口の端を吊り上げた。
確かに彼は言ったのだ。

『俺だけお前らの倍働いてやるよ。危険なことがありゃ俺に回せ』

この仕事が終われば、報酬の12万Gと共に美人婦警との一日デート権が手に入る。
デート権目当てのエイジは、確かにダナとジャムにそう言ったのだ。
「人一倍働くっつーのはいいとしてだな……」
エイジが明らかに不機嫌そうな声で言った。
「俺の隣りで喋りながらクラッカー食って酒飲んでんのが気に食わねえんだよ!」
タイヤ付きの車を運転するのは久しぶりだしさ、と更にエイジは愚痴を言う。
そんなエイジの憤慨した様子に、ダナとジャム、そしてルーは互いに顔を見合わせる。
彼らの手元にはクラッカーとチーズ、生ハムに数種のサンドイッチ、そしてぶどう酒の入ったバスケット。
ぶどう酒は上等なものらしく、太陽の下、グラスの中に美しい紅色が輝いている。
「あら、だって運転手はお酒飲ンじゃいけないのよォ」
ダナは言い、チーズを載せたクラッカーをエイジの口元に運ぶ。
「ま、これでも食べてなさいな」
「………」
憮然とした表情で、エイジはダナの差し出したクラッカーを口にした。
「生ハムが食いたい」
それをぼりぼりと咀嚼しながら不満を漏らすエイジに、ダナが笑う。
「ダメよォ、絶対お酒飲みたくなっちゃうから! これはアタシが食べてあげる」
そう言って鮮やかな色をした生ハムをぺろりと飲み込む。
彼を横目にエイジは口元を引き攣らせ――バギーのアクセルを思い切り踏み込んだ。
「うわッ!」
瞬間、がくんと車体が揺れ、速度を上げたバギーが砂煙を巻き上げる。
グラスの中のぶどう酒は大きな波をつくり、ジャムが手にしていたサンドイッチの中身がはみ出した。
上等なサーモンは、一緒にサンドされたレタスとソースと共に宙に浮かぶ。
「とっとと目的地に行くぜ!」
エイジは衝撃で転ぶジャム達を横目に笑って言った。
「「あ、あんたねえええ〜ッ」」
「ちょっと、旦那ァッ! 俺の車大事に扱ってよぉッ!」
三人はサンドイッチとチーズにまみれながら、エイジの耳元でそんな声を上げた。


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