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「demande」
【女性向け 官能小説】

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「demande」<槙惣介>-11

「はっ…、はははっ。あはははっ!」

突然、七香は笑い出し、惣介は気が触れたのかと驚いた。
数秒前まで勢いよく叫んでいたのに、今はケラケラ笑っている…。

「…どうなさったのですか?」
「っは、あはは…。ご、ごめん。なんでもないわ。気にしないで」

事情がさっぱり飲み込めないが…七香の表情はとても晴れ晴れとしている。
それだけでとても良い事のように思えて、惣介は嬉しかった。
その顔がとても可愛かったから。

「思ったとおり。お嬢様は笑顔が一番素敵です」

「!だ、だから…そうゆうこと言わないでよっ…」

嬉しくなったり、ドキドキしたり、心の鎖が解けたり、
たくさんのことに気づけたり、それもみんなあなたのお蔭…なのかな。

「色々…ごめんなさいね」
「?」
「最初っから嫌な思いさせたこと。帰れだなんて言ってしまって…。
そして、都合いいかもしれないけど…あなたを傷つけてしまったこと、許してね」

そう言った微笑みは、とても柔らかく、穏やかだった。

…人が変化する様は、見ていてドラマチックだと思う。
ダイエットに成功した人とか、成績が上がった人とか、不良が改心したとか。
これはそんな大事じゃないけど、今はそれに似た気分を味わってるみたいだった。
または、仲直り…みたいな甘さ。

惣介は返事をする代わりに、ゆっくり首を横に振り、七香をそっと抱きしめた。

「!」

七香は少しびっくりしたものの、抵抗もできずに沈黙。
抱きしめられた瞬間、アイロンをかけたばかりの高潔な匂いが鼻腔を潜った。
この紳士な香りに包まれていたいと思わせたのか、
自分の肩や頭に触れている彼の体温が心地好いと思ったからか―――
なんにせよ、素直に感じる思いに抗う理由などなかった。
自分とは違う生き物――男。
それはこんなにも大きくて、あったかいものなんだと初めて知る。
そして心臓の音は、自分の身を―血を―骨を伝って脳へと響き渡ってゆく。

スっ…と惣介が七香の身を離すと、両肩に手を添えたまま、まっすぐに彼女を見つめてこう言った。

「申し訳ありません…。先ほど、嫌がることはしないと申したばかりでしたのに…。
でも、お嬢様からのお言葉が本当に嬉しくて、とても言葉じゃ表せなかったんです」

惣介は正直に気持ちを伝えた。

「名前…」

「え…?」

「もう一度、名前…教えて?」

「槙…惣介です」

「ソウスケ…」

彼女はずっと下を向いたまま、俺の名前を記憶させるように呟いた。
少し放心してるようにも見えたが、彼女の口から自分の名前が発せられた時、
まるで自分を受け入れてくれようとしてるみたいだと感じた。


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