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「demande」
【女性向け 官能小説】

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「demande」<槙惣介>-12

「…お嬢様。私はお嬢様に勉強を教えることはできませんが、何かお役に立てることがあるなら、
何でも言っていただきたいと思います。大したことはできませんが、掃除でもなんでも…」
と言って、この家を見渡してどこにチリやホコリがあるというのか…と思い直した。

「惣介」
「はい、お嬢様」

「もう一回…、その…」

決して目を見ず、俯いたまま続く言葉を飲み込む。
彼女の口から続きの言葉が出ないのはわかった。
でも、言いたい内容は言わなくても理解できた。



………言わせねーよ。


「…っ!」

惣介はさっきより少し強く、彼女を引き寄せて包み込んだ。
またもびっくりした様子だったが、さっきと違うのは、彼女の手が震えながら惣介の背中に添えられた
ということ。息をするのも躊躇っているような震え。小さい身体はより一層小さく感じた。

「これで…よろしいですか?」

七香は返事もできず、ただ首をコクコクと上下させる。
小さく、小刻みに頷かれた「OK」は、どんな言葉よりも満足だった。
きゅっ…と抱きすくめたままでいると、愛おしいという気持ちが芽生えてくる。

「…小さくて、柔らかくて、子猫を抱いてる気分です」
「そ、んな…」
「こんなに可愛らしい方にお会いしたのは初めてです」
「それはっ…。言いすぎでしょ…」

さすがの七香も、度を越えたリップサービスだと思ったらしく、素直に受け取らなかった。
本心だったのに…。それをサッとかわされて、惣介は少し不満だった。
しばらく考えた後、抱きしめてた腕を緩め、片手を七香の顔に添える。

「…失礼します」

惣介の顔が数センチにまで近づき、七香は無意識に目を閉じた。


「…っ!」

生まれて初めての「キス」という行為。
身体全体に微電流が流され、まるで内臓をピリピリと刺激しているかのような感覚―――
ほんの数秒だったが、それは確かに脳裏に焼きつく印象を与えた。

「…私は本気で言ったのですよ。今のが証拠です」

真っ直ぐな眼―
心外だと言わんばかりの表情―
抱きしめるチカラが強くなってる―

「demandeでは、お嬢様から求められない限り、自分から行動を起してはいけない という
決まりごとがございます…。それを破ってしまうことはダメだと知りつつも、自分の気持ちを
『口がうまいだけ』と思われたくなかった…。不快にさせてしまいましたか?」

七香はなんとか口を動かそうとしたが、何を発していいかわからなかった。
「良い」とも「悪い」とも言えず、ただ顔に集まった血が沸騰していくのを感じていた。
もう一度、そっと抱きしめられ、耳元で『すみません』と囁かれる。
何もかもが初めての体験に、目眩すらおきる。
唇も、鼓膜も、見えない焼印がついてるんじゃないかと思うほど熱かった。
こうして抱きしめててくれないと、立ってることすら容易ではない。
震える足は、地についていない気がした。


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