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「demande」
【女性向け 官能小説】

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「demande」<槙惣介>-10

「お嬢様」
「……?」
「今はお嬢様のためだけのお時間です。その質問は…必要とは思えません」
「…そ、…そうね。ごめんなさい」

はぐらかされたようにも思えた…。
でも、一番ベストな回答なのかもしれない。
そんなことを聞いても、どんな返事だとしても、どうすることもできないだろう。

「お嬢様にさえ必要とされれば良いのです。…でも、私ではお嬢様の望まれることに
応えることができなさそうです。本当に…申し訳ありません」
「そ、そんなこと謝らないでよ!」
「いえ…実は代案があるのですが…」
「代案?」
「はい。先ほどHPでご覧になられた執事が、もしかしたら対応できるかもしれません」

諏訪と会ったのは、彼が仕事を終えて戻ってきたところだった。
今の時間から次の指名が入っているとは思えない。だとしたら、館で休んでる可能性が高かった。
…こんな事例今までに聞いたことがないけど、事情を話せばチェンジしてもらえるかもしれない。

「それって…あなたと入れ替わるってこと?」
「はい。お約束はできないのですが…連絡を取ってかけあってみようと思います」

七香の気持ちは、頭で考えてることと葛藤し合い、複雑に絡まって…答えに辿り着けずにいた。

もし本当に…その人が来てくれたら…
あの問題も…あの論文も…一気に理解できるチャンスかもしれない。
でも…今の私に「じゃあその人に来てもらって」なんて言えない…。
この人を傷つけた上にそんなこと言ったら…「アナタじゃダメだから帰って」って
言ってるのと同じ事だもの…。


彼女が考え込む理由は手にとるようにわかった。
でも、今彼女に必要なのは自分じゃなく諏訪さんなのだ。

「お嬢様、今連絡を取ってみます。少々お待ち下さいね」

返事なんか待ってられない。
というより、返事をさせることのほうが酷だろ。
少なくとも俺に気を使って葛藤しているのだろうから…。
惣介がトランクから携帯を取り出し、館に電話を入れようとしたそのとき―

「ま、待ってよ!」
ガタンという椅子の音と共に、七香は叫んだ。
「…勝手なことしないで!」
「…ですが、私ではとてもお嬢様の勉学のお役に立てるとは思え…」

「いーのよ!!勉強なんて…どうでもいい!」

とっさに出た言葉―――
それは霧を吹き飛ばす突風のようだった。
絡まっていた気持ちの糸は解れ、晴れ晴れとした気分がじわっと広がるのを感じた。
何より「コレが正解」って感覚がうれしかった。

「勉強なんて―」と言えたことに爽快感を味わえるなんて…。
そうだ…勉強なんて…わざわざ家庭教師を頼む必要はないじゃない。
変なプライドが邪魔して、学校では「わかっているフリ」をしてきたけれど…
それが遠回りしていることに今、気づいた―――
学校で聞けばいいじゃないか。わからないことを素直にわからない…と。


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