これからも二人で-3
―プルルルル
携帯が鳴る。着信は、茂木。タイミングが良いのか、悪いのか。
「……はい。」
このままじゃ嫌だ!その気持ちが自然と通話ボタンを押す指に伝わった。
「あ、あの……香織?」
電話の向こうには、何も知らない茂木が照れた声を出している。
「そ、その、今から会えない?」
今会って、大丈夫か。茂木を必要以上に責めてしまわないか。
そんな疑問が頭に浮かんだが、それより真実を確かめたかった。
「じゃあ、今から茂木の家に行くね。」
「わかった!片付けとく!」
そういうと、茂木の明るい声はプープーという機械の音に消された。
―「香織っ!」
茂木の家に近づくと、年甲斐も無く、茂木が、ブンブンと手を振っていた。
「……茂木、お疲れ様。」
精一杯の笑顔で答える。
「香織も。寒いし早く家帰ろ!」
そう言って、さりげに鞄を持ってくれた手が冷たかった事が愛おしくて、西田に嫉妬する自分を消したかった。
「はい。」
そう言って差し出される照れ笑いとホットコーヒー、茂木の笑顔。
それを見ていると、自然に涙がこぼれた。
いつからこんな乙女モード全開になったのか不思議な程、涙は止まらなかった。
「香織?!どうしたんだよ?なんかあったのか?」
嫉妬した醜い私を知られたくない。
私は黙ったまま、乙女モードから抜け出すのを待った。
「ごめん、ごめん。なんでもない!」
私は精一杯ごまかすために、笑顔でホットコーヒーを受け取った。
それを口に近付けた瞬間、カップは宙を舞い、気付けば私は茂木の腕の中にいた。
「なあ、溜め込まずになんでも言えよ。俺、支えるから。頼ってよ。」
その一言で、乙女モードをせき止めていたダムは崩壊した。
私は泣きながら、酔った西田から聞いた話をゆっくり話した。
全部話し終えると同時に、
「あのさ、俺と美香が付き合ってたのは大学の頃なんだけど……。」
「え?」
一瞬、その言葉が理解できず、また私の思考回路は猛スピードで働きだした。
「だから、美香はサークルの後輩で……。確かに別れ方は良くなかったかもしれないけどさ。若気の至りで俺もちょっと遊んでたし……。」
罰が悪そうに茂木は頭をかいた。
「そう……。」
「でっでも!今は香織の事だけだから!kimiに入ってからは、ずっと香織だけだったから。」
茂木は焦って顔を赤くしながら必死で、もう涙も止まっている私に弁解していた。
その姿が可愛くて、また愛しさが込み上げてきた。
「……茂木。」
私は茂木の右手のコーヒーを机に置き、そっとキスをした。
お互いの気持ちを確かめるように、何度も何度もキスをした。
「香織、いい?」
少しかすれた茂木の声は、やけに色っぽく聞こえた。
私がこくんと頷くと、茂木は私を抱き上げて今朝目覚めたベットへと移った。