蒼い殺意-16
“お願いだから止めて!こんなことで嫌いになりたくない!”
涙が溢れ出てきた。
“お母さん、助けて!こんなつもりじゃなかったの、こんな彼じゃない筈なの。お母さん、お母さん、助けて!”
悔やんでも悔やみきれない思いの中に、母親の顔が浮かんだ。怒り顔の母親が、浮かんだ。
女学生の立ち去った部屋に一人残された彼は、一瞬に天国と地獄を見たように感じていた。今ほど自分を恨めしく思ったことはない。これまでの十七年間の彼が、ガラガラと音を立てて崩れていく。
「こうして大人になっていくのか・・・嫌だ、嫌だ!大人になんかなにりたくない!チルドレンシンドローム、それならそれでいい。一生を酔っぱらいで過ごしてもいい。狂人というのなら、狂人でいい。」
彼の観念の世界を滅ぼした己に、彼は激しい自己嫌悪を感じ、罪悪感に苛まれた。女学生の肌の温もりが、彼の体に強く残れば残るほど彼の苛立ちは増した。
「偽善者だ!ピエロだ!」
彼は、彼自身に、初めて『蒼い殺意』を持った。
━━━━━ ・━━━━━ ・━━━━━
=余談=
当時交際あっていた女の子に、この原稿を読まれてしまいました。
“バチン!”
平手一発ぅ、なら良かったんですが、涙を浮かべて部屋から飛び出していきました。
無理もないです、それまで手ひとつ握ってなかったんですから。
初めてアパートに入った日、でした。