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蒼い殺意
【純文学 その他小説】

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第五弾 One Pass Way  〜ブルー・ごしっぷ〜-3

齢、八十になろうかという老婆。今では耳が遠く、目も覚束ない状態です。更には呆けの症状らしきものも出始めています。先年に口の端にのった言葉に、村人皆が一喜一憂しています。

「誰ぞに伝えねばならんが・・。いっそ、皆で平等に分けてしまおうか。はるか昔の言い伝えなど、信じていいものかどうか・・。」

今、ぼそぼそと何かを洩らすのだが、中々聞き取れない。軍資金の在り処を洩らしたかどうかも、判然としない。しかしいつかは洩らすであろうと、皆が聞き耳を立てている。

口数の少なかった老婆だが、最近はまた、めっきりと口を動かさなくなった。時とすると、ひと言も発しない日もある。

「誰ぞ、もう聞き出しておるのでは?」
そんな声が、そこかしこで聞かれるようになった。しかし確かめる術はない。
*術=すべ

表面的には、互いに笑みを見せ合っている。創られた笑顔であっても、平穏な日々だ。がその裏では、恐ろしいほどの憎悪の炎が燃えている。疑心暗鬼の霧が漂っている。

妬みや憎悪の心を争いの根源とする土着宗教もいつか影を潜め、人間の業の前には、如何に脆いものかをまざまざと見せつけた。

一部の間では、老婆を終身まで世話させる為の奸計ではないかと疑いの声が上がってはいる。しかし今日も今日とて、訪れた家で、下にも置かぬ歓待を受ける老婆です。


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