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飃(つむじ)の啼く……
【ファンタジー 官能小説】

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The kiss and the light-40

足元から、業火が躍り上がって男の身体を飲み込んだ。内側から、外側から焼き滅ぼすその炎に耐えられるものなどいはしない…。消し炭のような、かさぶただらけの男の体は、炎に焼かれていじけるように縮こまり、断末魔の叫びは、炎に舌を奪われた後もずっと響いていた。

呪縛をとかれた中谷が、駆け寄ってめぐりを抱きとめる。

男の悲鳴が途切れるのを待っていたように、立ち尽くしていた体が崩れ…粉々にくだけた。

「めぐり…!」

助かる希望が持てる状態ではない…それでも、治癒を施そうと上げた手を、めぐりは拒んだ。

「だんな…」

めぐりは、それしか言えなかった。でも、俺には分かった。

―旦那、あの娘は、笑ってあたしを迎えてくれるでしょうか。

「きっとだ、めぐり」

彼は頷いて、今までで一番安らいだ顔をして、目を閉じた。

「美桜に…よろしく頼む」

彼は小さく、本当に小さく頷いて…手を広げて待つ、愛しい、本当の主人の元へ帰っていった。





―駆けつけた警察と消防隊は、今までに見たことの無い異様な光景を目にするだろう。そして、それこそが現実であり、今この国を地価から蝕もうとしている悪意ある根の一部に過ぎないことを知るだろう。

それから先、彼らがどう動くのか、俺には聞かれても分からない。無視を決め込むことだけは出来ない、としか言いようが無い。

血まみれの体を横たえる救急車のストレッチャーの横、中谷は俺の手を握っている。彼女の後ろの窓には、カーテンが引かれていたけれど、そこからは清らかな光が差し込んで、街が既に、太陽の洗礼を受けていることを知った。

「中谷」

「ん?」

―私は東に背を向ける、

そちらから慰めが増してきたから。

光が私の頭脳を、

狂ったような苦痛で捕らえるからだ―

「カーテン、開けてくれ」

緑色の酸素マスクのせいでくぐもった声を、彼女は聞いてくれた。

太陽の光が、消毒液と血の匂いに満ちた車内を満たす。

―俺は東に目を向けよう

そこにあるのは慰めではない。

光は心を、

遍く愛によって包み込むからだ―



「ありがとう」

光を背にして微笑む彼女に、今の言葉が届いただろうか。届いたのだろう。彼女はゆっくりと、優しく、目を閉じた俺の額に、光のようなキスをした。


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