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嘆息の時
【その他 官能小説】

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嘆息の時-7

一方、まったく身動きが取れなくなってしまった柳原。
呆然と見開かれたその眼には、再び唇を重ねあう二人の姿が映っていた。
(沢木……お前……俺を騙していたのか?)
いま行われているキスが先ほどのような軽いものではないことは、顔をせわしく動かし始めた沢木の態度で明白だった。
(ち、ちくしょう!!)
血が逆流した。
先ほどのフレンチキスだけでも、柳原は血管が千切れるほどの凄まじい嫉妬に見舞われていた。なのに、いま二人が行っているのはディープキス。卑猥に舌を絡めあうその行為は、独りよがりで出来るものではない。どういうわけか分からないが、愛璃もその気になっているということだ。
怒りを加えていく柳原の嫉妬は、もう二人に対する憎悪へと変わっていった。

チュ、クチャ……チュバ、チュパ―――

きつく互いの身体を密着させ、上から顔をかぶさた沢木がネットリと愛璃の口腔を愛撫していく。
口腔内で縮こまっている愛璃の舌に、沢木が誘うような仕草で舌を押し当てる。そのうち、愛璃の舌もしずしずと動きはじめた。沢木は、すぐさま愛璃の舌を絡めとり、優しく淫靡に自身の舌を蠢かせていった。
「んっ……んんっ……んふっ」
互いの粘液を淫らに擦り合わせながら、濃厚なディープキスを続ける二人。
いつしか愛璃の白い肌にはうっすらと赤みが差し、漏れる吐息にも重みが増していた。
「ハア、ハア、愛璃ちゃん……」
二人の唇が、透明の糸を引きながらゆっくりと離れていく。沢木は、数センチの距離で愛璃をジッと見つめた。
沢木の眼が、この行為を先へ進めていいものかどうかを探っている。
昂ぶる心は愛璃の身体を酷く欲しているが、無理強いはしたくない、また、愛璃を傷つけたくないという気持ちが淫欲を押し留める。
潤んだ愛璃の眼は、情欲を浮かべた沢木の眼を瞬きせずに見返していた。
「愛璃ちゃん……俺は、心から君を愛している」
沢木は再び唇を押し付けた。柔らかな愛璃の唇を、その悩ましい弾力をきつく歪ませながら、今度はもっと強く唇を押し付けていった。そして、すぐに舌を突き伸ばし、同時に右手の掌で胸の膨らみを掴み上げた。
「んっ……」
愛璃が、戸惑ったように少し顔を振る。
「愛璃ちゃん……俺……止まんね」
唇を重ねたまま、沢木がゆっくりと愛璃の身体を床に押し倒しはじめた。
軽く震えてはいるものの、愛璃から拒絶の反応は伺えない。こうなると、もう沢木のほうは冷静さを失くすばかりだった。
隣には柳原が寝ている。物音で、突然起きてくるとも限らない。しかし、抑え切れない欲情がどんどん沢木を暴走させた。
バレたらバレた時だ。その時は土下座でも何でもして謝ればいい。そんな、いい加減な考えで不安の種を取り払っていく。とにかく愛璃が欲しくて堪らない。可憐な唇を執拗にしゃぶり、手のひらにあてがった胸の膨らみを感情のまま揉みたくっていく。
それは、沢木らしからぬ行動であった。

(さ、沢木!? な、なにやってんだ!? マ、マジで何やってんだよ、お前!!)
隣の部屋に上司を寝かせ、こっそりと淫らな行為にふける二人。
信じられない目の前の現実に、驚愕しながら眼を血走らせていく柳原。
同時に、沢木の行為に何の抵抗も見せない愛璃に失望し、自分本意ではあるが裏切られたという思いで胸が張り裂けそうになった。

「ハア、ハア、愛璃ちゃん」
細い首筋に唇を押し当てながら、興奮しきった様子で愛璃のシャツをたくし上げていく沢木。
シャツをTシャツごとヘソあたりまでたくし上げ、すかさず中に手を突っ込んでブラの上からグイグイとボリュームある胸を揉みしだく。
「さ、沢木さん、待って」
大胆になっていく沢木の行為に、愛璃がたまらず声をかけた。
「愛璃ちゃん……やっぱり俺じゃ無理?」
沢木が不安そうに聞く。
「い、いや、そうじゃないけど……店長が隣にいるんだよ?」
愛璃が、垂れた眼を悲しそうに歪めながら唇を噛み締める。
「店長なら平気だよ。あの人、酒が入ったらカミナリが落ちたって起きる人じゃないから」
「いや、そういう事じゃなくて……あっ」
沢木が、いきなり愛璃の腕を掴んでスッと身を起こした。
その様子に、覗いていた柳原があわてて奥へと引っ込んでいく。別に逃げる理由などないのだが、事の成り行きを密かに覗いていたという罪悪感がそうさせた。
「愛璃ちゃん、こっち来て」
沢木は、ためらう愛璃を半ば強引に寝室へと連れて行った。


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