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はるかぜ
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にじゅうしせっき-5

「ずっと、会いたかったんだ。こうしたかったんだ。……ね、金平糖365粒なの、分かった?」

「え?」

「金平糖。今日食べ終わったでしょう?雨水さんに聞いたよ」

りつが頬をすりすりと寄せる。

「雨水が?」

「うん。……ずっと協力してもらってたの」

「雨水に?」

「うん。一年経ったら二十歳になるから、そうしたら、春風の側に行こうって決めてたの。だから春風が東京に帰った後雨水さんから掛かってきた電話でそう話した。金平糖の意味も、全部。そうしたら協力してくれるって。その代わり暁のファンである前に春風の彼女になるんだよって、言われたの。そんなの簡単だって思ってたけれど、案外難しかった。……だってね、ファンに嫉妬しちゃいそうなんだもん」

そこで全部の歯車が回るように納得がいった。
雨水が今朝迎えに来た訳も、変に質問をしてた訳も、どこかに行くと言っていた訳も。

こつんとりつの頭に顔を埋める。
一年ぶりのりつの匂い。

りつがポケットから鍵を取り出して俺のポケットへ入れようとする。

「雨水さんから返しておいてって。合鍵」

食器棚の前に立っていたのは鍵を取ったからだったのかと分かり一人で笑ってしまった。
りつの手をゆっくりと制止して、その手のひらを握り締めさせる。
鍵はりつの手に残ったままだ。

「……ね、春風。ずっと一緒にいていいの?」

りつが上を向いて不安そうにじっと見つめてくる。
少し屈んで俺は返事の代わりに三度目になるキスをした。

「良いよ。りつがそう望むなら」


俺の右腕の上にはりつが小さな寝息を立てて、細くて白い裸体のまま眠りについている。
俺はりつの頭をそっと、そっと撫でながら眠るのも忘れて寝顔を見ていた。
りつが寝返りをうって、俺の腰の辺りの抱きついてきた。
やっと手に入れた大切な自分だけの白い花。
もうどこに逃げる事も無くずっとりつの側を暖める春の風になろうと、そっとりつの額に唇を乗せて想った。


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