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きみおもふ。
【純愛 恋愛小説】

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きみおもふ。-4

バス停は高校から十分程度歩いた所にある。もう通い慣れた道。友夏は物思いに耽りながらゆっくり歩く。
(受験生って何だか長いなぁ)
遣る瀬ない思いを抱え天を仰ぐ。瞬く星座達。友夏はすっと心が晴れていくのを感じた。
(そうだよね、頑張んなきゃ。勉強嫌だなんて言ってらんないよ)
自分を奮い立たせ、友夏は前を見据える。

―――――。

足を進めようとした瞬間、背後で何かの音がした気がした。振り返る友夏。しかし暗闇で何も見えない。
(気のせいかな)
再びバス停に向かい歩きだす。

――ヒタヒタヒタ―…

友夏はハッとして足を止める。誰かの足音が背後で聞こえたのだ。
神経を背に集中させ、ゆっくり、慎重に前へ足を出す。

――ヒタヒタ―…

背後の足音もゆっくり、慎重に始まった。
(やっぱり……気のせいじゃない。私つけられてる……?)
心臓はバクバクと大きく早く鳴りだす。
(どうしよう、恐いよ)
友夏が足を早めると、背後の足音も早まる。バス停に着いたとしても、バスはまだ来ない。つまり友夏は暫く闇夜に一人きりなのだ。
ぎゅっと手を握り締めてから、友夏は意を決して走りだす。
(次の曲がり角を曲がればコンビニがあるはず。そこまで頑張ろう!)
自分の息音で背後の音は掻き消される。足音の主がつけるのを諦めたのか、はたまた友夏のすぐ後ろに迫っているのか分からないので、友夏はただひたすら走った。
恐くて、苦しくて、泣きたくて。誰かに助けて欲しかった。今すぐに――…

ドンッ!

コンビニへ続く曲がり角を曲がった瞬間、友夏は何かにぶつかった。いや、「何か」ではない、「誰か」だった。なぜならぶつかった部分から温かな温もりが感じられたからである。
「助けて!助けて下さい!」
友夏は勢いに任せて相手に縋りついた。相手は支え切れず、後方に尻餅を着く形で倒れこむ。
「誰かが後付けてきてて、私恐くって…」
相手の胸元辺りの服を握り締めたまま、友夏は必死に言葉を続けた。

「……ゆか…?」

びくん。
名を呼ばれたことに驚き、俯いていた顔を上げる彼女。その視界に映ったもの、それは――…
「い…つく…」
驚いた。しかし、それ以上に安心した。逸がそこに居たのである。
安堵した瞬間、友夏の瞳から堪えていたものが零れ落ちた。
「恐かった……私…」
そっと逸の腕が震える友夏を包み、抱き寄せる。素直に胸へ納まる友夏。
「逸くん…逸くん…っ…」
存在を確かめるように、友夏は逸を呼びながら身を任せる。

「…っ…ゆか…っ」

それは一瞬だった。ぐいっと強く抱き寄せられたかと思うと、額に熱く柔らかい感覚。

唇?

あまりの驚きに友夏の涙はぴたりと止んだ。
「……あの…?」
ハッとしたように逸が友夏を放した。彼女から視線を逸らしたまま立ち上がる。
「メソメソすんなよな」
冷たい声が友夏の心を刺す。
「ご、ごめん」
慌てて立ち上がり、友夏はスカートをはらう。
「つけられてたって?そんなの気のせいじゃないか?誰もいねーんだけど」
逸は学校へ続く道を覗き込んで言った。
「そうだよね、うん。きっとそうだよ。ごめんね、迷惑かけて。じゃあ、私帰るね」
気のせいじゃないんだなんて、友夏に言う勇気は無かった。胸がズキズキ痛んで、止まったはずの涙がまた溢れそうになっている。
(逸くんは私を嫌ってるんだもん、あんまり一緒にいちゃダメだよね)


そっと目の辺りを拭い、友夏は歩きだす。


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