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桜の木の下で
【学園物 官能小説】

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桜の木の下で-15

「先生……」
「何?」
「あたし、本当にこのクラスで良かった。一年間ありがとう!」
「こちらこそありがとう。来年も見かけたら声はかけてね。」
「はい、それじゃあ……さようなら!」
あたしは精一杯の笑顔を作って教室を飛び出した。
言いたいことはもっともっとたくさんあったけど、その半分も伝えられずに……。


あたしはアルバムを収め、目を閉じた。



<9.転機>
土曜日。
あたしは、自分にできる精一杯のおしゃれをして街に出た。
普段より10センチは短いスカート(ちなみにいつもは膝上)に、いつもより明るめの服を合わせてみた。
「早く着きすぎたかなぁ……」
待ち合わせより30分も早い到着。
「はぁ……焦ってるなぁ、あたし……」
思わず出てしまう独り言。
「何を焦ってるって?」
「えっ!?先生!」
「来るの早いねぇ、て人のことは言えないんだけど……」
「本当だよ〜フツーにびっくりしたよ〜。」
「ま、早くも全員集合したわけだから、入りますか。」
「うん!」



店内は今日は珍しく空いていて、遠くにもう1、2カップルいるくらい。これならわりとどんなことでも喋れそうだ。
ケーキセットを2つ注文して、しばしの雑談。



「で、聞きたいことって何?」
チーズケーキを食べながら、先生が聞いてくる。
「あぁ……あの、先生。『良薬口に苦し』って言葉があるでしょ?」
「あぁ、ことわざだね。うん、それが?」
「あの意味、ちょっと教えて欲しいんだけど……」
「あれはつまり……良い薬って、苦いもんだよ。だから、自分にとってプラスになるものを得るときは苦しい思いくらいは我慢しなきゃダメだよ、てことだね。」
「ふ〜ん……じゃあ、お金を稼ぐために苦しい思いするのも良薬口に苦し、てことになるかな?」
「う〜ん、それはどうかな……普通は良薬は経験だったり知識だったりそういうものをさすからね。本人にとってお金が良い薬になるかどうかだよね。」
「あ〜、そっかぁ……」
あたしにとってのお金って、自分の虚しさを埋めるものではあるけど、使ったらまた無くなってしまうし、そしたらまた空虚な気持ちになってしまう。
それは……良薬とは言えないかもしれない。
「島川さん、バイトか何かしてるの?」
「へっ?」
唐突な質問にたじろいでしまう。
「いや、今島川さんがバイトか何かで悩んでるのかなって。苦しいバイトでお金を稼いでるけど、それがしんどいな、とか考えてるのかって思ったんだよ。」
「ま、まぁね。高校生だしバイトくらいはするよ。」
どんなバイトか聞かれたら何て答えよう……
「そっか。もう高校生だもんな。何か嫌なことや悩みがあるなら話聞くよ?」
「う…うん……」
どうしよう、オブラートに包んで聞いてみようかな……



よし、聞いてみよう。
「ねぇ先生、あたし今バイトしてるんだ。」
「うん。」
「そのバイト、時給いいんだけど、何か頭機械にしないとやってらんないんだよね。」
「頭が機械?」
先生が目を丸くする。


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