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桜の木の下で
【学園物 官能小説】

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桜の木の下で-13

「いえ、別に……」
「ふざけるな!!話は最初から聞いていた。お前らが島川さんに投げかけた言葉の重さを、その言葉をかけられた島川さんの気持ちを、お前らは考えてんのか!」
普段絶対に「お前ら」なんて言葉を使わない先生のあまりの迫力に、皆顔をあげることすらできない。
こんなとこじゃ話はできない。全員、図書室に行くんだ。いいな!
「……はい」
先に彼女たちを行かせた後、長野先生があたしの前にひざまずき、あたしの両肩に手を置いた。
いつもはずっと上にある長野先生の顔があたしのすぐ下にある。本当に、本当に悲しそうな眼。
「島川さん、大丈夫か?」
「はい……」
「ごめんな、……あいつら、『いつまでたっても平気で生きて……』て言ってた……先生は、お前の変化に、周りの変化に、気付けなかった……」
「いいんです、先生。あたしも何も言い出せなかったから……」
「それでも、気づかなきゃいけなかった……ごめんな。先生、今から向こうと話してくるから。その後、みんなで一緒に考えて、二度とこんなことがないようにしよう。もう少しだけ、しんどい思いさせるけど、いいか?」
「……はい。」
「……ありがとう、じゃあ先生は図書室行ってくるよ。島川さんは教室に戻ってなさい。」
そう言い残して、先生は立ち去った。



結局、大休憩の残りと3時間目に、先生が帰って来ることはなかった。
先生が頼んだんだろう代わりに、音楽の木村先生が来て、
「3時間目は自習よ。」
と静かに言った。
あたしがいじめを受けていたことを知っていたクラスのみんなは、大休憩の間に何が起こったかを察したのだろう、普段はワイワイと賑やかになりがちな自習の時間なのに、その日だけは重苦しい雰囲気だった。
あたしはと言えば、皆の視線が時々こっちに向かってくることと、ひそひそ声が聞こえることがすごく苦しくて、あたしは本を夢中で読むふりをして、ずっと周りを見ないようにしていた気がする。
4時間目開始のチャイムが鳴り終わったくらいに、あたしは先生に呼ばれた。
どんな話をするんだろう、すごく足が重かったけど、長野先生が背中に手を回して、力強く押してくれた。
図書室に入ったあたしの目に飛び込んできたのは信じられない光景。
全員が全員、目を真っ赤にして泣きはらしていた。
みんなはあたしを見るなり、あたしを取り囲む。
そして……。
「ひっく……ごめんね、美樹……。さ、最初はね、遊びの……っく、つもりだったの。…っく、でも止めれなくなって……」
「うっ…ひっく、あたしも……『止めようよ』って言ったら自分が……ひっく……されそうで……怖くて……許して……」
「いけないことって……ひっく…ひっく…分かってたんだけど……本当にごめんさい……ひっく……」
それらが演技じゃないってこと、これでいじめが終わることは明らかだった。
「ううん、いいよ。」
今までされてきたことを考えると、心の底から許すことは難しかったが、きっとこれで終わる……その解放感から、その言葉は素直に出たと思う。



その後、教室に戻って臨時ホームルーム。
あたしのいじめを知っていた人は手を挙げるように先生が言うと、クラスの全員が手を挙げた。
すると先生は黒板に三重円を描き、まん中に「受」、そのひとつ外に「攻」、そして一番外側に「見」と書き、静かに話し始めた。
「いいかい、いじめと言うのは、『いじめを受ける人』と『攻める人』だけでは起こらないんだ。大多数の『ただ見ている人』『見てみぬふりをしている人』がいるから、起こるんだよ。誰かこの中の一人、たった一人『これはおかしいんじゃないか』と言い出せれば、止められることなんだよ。だから、このクラスにいる全員が、ずっと1人の人を傷つけ続けてしまった。なぁ、分かるか……」
先生の話を聞いて下を向いて俯いている人、うっすら涙を浮かべている人、様々だったが、1人も喋る人はいなかった。


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